再会した幼なじみ同士、かつてのいじめっ子といじめられっ子の、帰郷の物語。
シリアス、かつハードな現代ドラマです。
男同士の関係性、強い執着のような何かを描いたお話。もちろんのこと、といってはなんですけど、いわゆるボーイズラブでもあります。
いろいろ最高でした。お話そのものは非常にコンパクトなのですが、それだけに話の軸がキュッと引き締まっており、内容がまったくぶれない上に大変濃密なところがすごい。この読み応え!
中でも好きなのは主人公の性格、このクズっぽさが文章からじわじわ滲み出るところ。
いちいち「おまえ」のせいにしてみせるところとか、まさしく一人称体だからこその芸当だと思います。
この嫌悪と共感が同時に来る素敵なクズっぷり……素敵……。
シリアスな現代ドラマとして読んで美味しく、BLとしてもたまらないお出汁が効いてる、とても読み出のある作品でした。
なんかもういろいろの比重がすごい。一文字あたりの内容の詰まりっぷり!
起きてることは殺伐としているけど、喩えるなら少年が無邪気に虫を捕まえようとする姿を思った。手に収まるほどの虫が捕まえた気でいてなかなか上手くいかず、ムキになって追いかける。いざ捕らえてみると力が強すぎて握りつぶしてしまうような。
語り手は後悔もないというような言葉を並べるが本心は揺れているように思えた。本質的な部分は根ざしたまま形だけは大人になって、それは身なりの変わった幼馴染も同じであり、かつての関係性もまた変わることなく帰郷へと繋がる。テーマである「幼馴染との旅」共にある姿は中々エッジのきいた表現で僕は好きでした。ここまでめちゃくちゃに踏み外すことなんてとは思うけれど少年時代への回帰の中で語り手の姿も荒唐無稽な幼さに向く。回帰、過去、帰郷と逆行しながらも退路が悉く消えていく様には自分が最も生を実感出来た頃に自らも留めておきたいというような淡い期待を思わせる。