悪癖について
私の初恋は、フィクションの中で暗躍する一人の悪役で御座いました。人間の恋とは随分と早くから始まるものでして、私は六つ歳を数える頃には既に恋をしておりました。最も、今でこそそれが果たして恋であったかどうかも
私は、実に空想世界にふける事が好きな子でした。幼い私の目には、私にしか見えない友人がおりましたし、宙を
彼は、立派な悪役でありました。黒い
また、悪を働く為にはそれなりの頭脳を必要とします。才無くしては、何も武器を持たない事に等しい。力技で好き勝手出来るものには限度が設けられております。優秀な悪役には、優秀な頭脳がつきものであります。彼等は非常に賢い。賢いが故に、己の弱さや別の生き方を知り、どの様な道でも選ぶことができるので御座います。彼等は選ばれし者なのであります。ただ少し、悪に好かれて仕舞うだけなのだ。悪に魅入られ、闇に溶け込み、それでも一途に己の使命を全うするのみで御座います。なんと素晴らしい生き方でありましょう。人間みな善人の世界を想像してご覧下さい。それはそれは恐ろしいものであります。皆微笑みを讃え、常に他を思いやり、全てを持って人に尽くす。私には善人の定義というものが判りませんのでこの様な稚拙な想像しか出来ませんが(空想の能力と、想像する力は決して一致しないと思っております。想像の方にはしばしば、己の経験が必要となるのです)、私には善人のみの世界など、最早地獄に近いものに思えます。自由の無い世界であります。どこが素晴らしくありましょう。それならばいっそ、悪人と成って仕舞った方がましだ。私利私欲の為に頭脳を駆使し、この広い世界を駆け回り、一本の放たれた矢の様に天命を全うする人生の方が、よっぽどいい。はい、そうで御座います。私は、悪を愛しております。それ故、悪の道を進む勇敢な人間を敬愛すらしております。所詮人間など欲の塊で御座いましょう。欲の無い人間などおりますでしょうか。もっと素直になっても宜しいのでは?貴方もですよ。そう、貴方です。普通の感覚をお持ちならば(最も私は、普通、と言った表現を非常に忌み嫌うのですが、)悪はいけないとお思いかも知れません。しかし、
文学モドキ 高良麗沙 @nathan13
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