よく行く街の喫茶店
井上 幸
(短編)
よく行く街の
かちゃり、と
シャラシャラ揺れるベルと共に、
「いらっしゃいませ」
小さく
左も席があるけれど。
君は右が好きだから。
こぢんまりした店内が、今日は僕らの他に1組だけ。
楽しそうな会話が向こうから。
僕らのいつもの
君はヒトとの距離に
「何にする?」
最近の君のお気に入りな、
そんな僕の想いを
「私、これ」
君がぴしりと指差すは、『
その名も『ハニー・ミルクカフェ・コン・レーチェ』。
「え? 聞いたことないな。
「私も聞いたことないよ。でも、甘くて美味しそう」
楽しそうな君の横顔に、僕まで
ハニーとミルクの
「お決まりですか」
と決まり文句で問われれば、きらきら笑顔で君が答えるけれど。ちらりと
「同じにする?」
落ち着け。さすがにここで、それは恥ずかしい。
ひとつ
「僕は珈琲フロートで。あと、この豆ください」
「豆のまま?」
「はい、豆のまま」
「かしこまりました。少々お待ちくださいね」
この店のマスタは、隣の
豆が無くなったのを口実に、ここで美味しい珈琲飲んで。
家では君が淹れてくれる。そんな休日。
「フロートなんて、寒くない?」
「先週、すごく美味しそうだったから。今日はこれって決めてたんだ」
「ふーん。そう?」
ちょっと
カウンターでは、ぽたり、くるくる、
実験器具みたいなその姿、眺める時間は
目の前には
いやいやそれだとコストがね、と
マスタはまぁまぁ、やれやれ、と。
『
お
「お待ちどうさま。ごゆっくり」
去り
まったり。ゆったり。流れる時間。
幸せだなぁと、そう思う。
「甘ーい。幸せ」
君がそうっと
いつかこんな場所を持てたら良いね、と
***************
よく行く街の
今日のマスタは
まったり。ゆっくり。流れる時間。
今日のカップは『ジノリ』かな、『ナルミ』かなって話し合う。
君と僕との”いつか”の形。
よく行く街の喫茶店 井上 幸 @m-inoue
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