第59話 裁きを下して
私は、お兄様から全ての経緯を聞かされていた。
どうやら、お兄様は自身の母親であるカルニラ様に、復讐するために生きてきたようだ。
その人生は、とても悲しいものだった。生き甲斐が、復讐などというのは、どう足掻いても辛いものだろう。
「これが俺の人生だった。そして、俺は今からそれを終わらせる。母上の罪を告発して、裁くからだ」
「裁く……」
「そうした場合、母上は必ず、真実を話すだろう。そうすれば、俺はクーテイン家にいられなくなる。結局は、同士討ちという形になるだろうな」
お兄様は、カルニラ様の罪に関する証拠を見つけ出したていたらしい。
それを使って、カルニラ様を裁くつもりのようである。あの人には、裁きを受けてもらいたいと思っている。だから、それ自体は構わない。
だが、そうすることで、お兄様が破滅するというのは、少し悲しかった。ここまでやって来て、その結果がそれでは、あまりに悲惨なのではないだろうか。
「俺が去った後、お前はあの愚者二人を相手にすることになるだろう。あの二人も、それなりに手強いはずだ。だが、今のお前ならそれも乗り越えることができるだろう」
お兄様は、私に対して、今後のことを話してきた。
彼が去った後、私は二人の姉と戦うことになる。それは、理解していた。カルニラ様も、お兄様もいなくなれば、あの二人がこのクーテイン家を牛耳る。そうなれば、私を始末しに動いてくるだろう。
「お兄様は、どうするのですか?」
「俺は何も問題ない。この時のために、俺は力を蓄えてきた。このクーテイン家を去ろうとも、どうにでもなる」
私は、お兄様の動向が気になっていた。
彼がいなくなった後、どうなるか。それをずっと考えていたのだ。
お兄様は、強い力を持っている。その力の使い方も知っている。そんなお兄様なら、一人になろうとも、なんとかなるのだろう。
「……困ります」
「何?」
「お兄様がいなくなると、私は困ってしまいます。二人の姉を相手するのは、厳しい戦いになります。乗り越えることができるかもしれませんが、私はもっと安易な方法に頼る方がいいと思っています」
しかし、お兄様はなんとかなっても、私は厳しいままだ。
カルニラ様がいなくなっても、二人の姉がいる。その二人と戦い抜くのは、とても厳しいものになるだろう。
だが、あることをすれば、その労力を割く必要がなくなる。私は、その安易な方法に頼ろうとしているのだ。
その方法に、お兄様は納得しないかもしれない。しかし、それを許容せざるを得ないようなことを、彼は今までやってきた。この提案を突き放すことは、できないのではないだろうか。
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