第47話 話を聞きたくて

 私は、お兄様の執務室を訪ねていた。

 フリムド様から色々なことを聞き、私はお兄様に話を聞かなければならないと思った。彼の口から、もう一度事情を聞かなければならないのだ。


「ふん……俺に用とは、一体なんだ?」

「お兄様から、聞きたいことがあるのです」

「聞きたいこと? なんだ?」


 私がフリムド様から色々と聞いたことを、お兄様は知らない。

 だが、なんとなくわかっているのではないだろうか。カルニラ様との会話が外に漏れることを、お兄様は気にしていなかった。

 そのため、誰かがあの会話について聞いてくることは、予測していただろう。だから、聞きたいことと言われた時点で、どのようなことを聞かれるかはわかっているのではないだろうか。


「フリムド様から、全てを聞きました」

「ほう? それはどういう意味だ?」


 私の言葉に、お兄様は少しだけ表情を変えた。

 フリムド様から全てを聞いたという言葉は、お兄様にとって警戒するべきことだったようである。


「お兄様の真実とお母さんの真実……どちらも聞かせてもらいました」

「何?」


 そこで、お兄様は一瞬だけ珍しい顔をした。

 驚いたような表情になったのだ。この人がそんな顔をしたのを見たのは、もしかしたら初めてかもしれない。

 恐らく、前半は問題なかったのだろう。後半を知られることが予想外だったのである。


「まさか……奴がお前にそこまで話すとはな……」


 しかし、お兄様の表情は既に戻っていた。

 どうやら、知られたとしても、そこまで焦る必要がある訳ではないようだ。


「それで、お前は俺に何を聞きたいというのだ?」

「お兄様から、改めて事情を聞きたいのです。あなたの口から聞いて、私は全てを飲み込めると思います」

「なるほど、それなら、お前に話してやるか。どうせ、知っているのだ。今更、隠すことでもない」


 私の言葉に、お兄様はそのように返してくれた。

 どうやら、きちんと話してくれるつもりであるようだ。

 これで、お兄様から直接色々な事情を教えてもらえる。フリムド様から教えてもらうよりも、詳しく当時のことを知ることができるはずだ。


「さて、少々長い話になるが、構わないか?」

「ええ、問題ありません」

「そちらに移るか。お前も座れ」


 お兄様は、執務室の大きな机から、ソファの方に移動した。

 私も、その対面に移動して、腰掛ける。これで、長時間の話でも大丈夫だ。

 こうして、私はお兄様から話を聞くことになるのだった。

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