第46話 母に関わること

 私は、フリムド様からお兄様について聞いていた。

 なんでも、お兄様はカルニラ様とフェリンド様という侯爵家の人間との間にできた子供であるようだ。

 そして、そのフェリンド様は既に亡くなっているらしい。カルニラ様が、殺害したようなのだ。


「……動揺しているあなたに、これ以上動揺することを言うのは少し気が引けます。ただ、まだ知らせるべきことがあるのです」

「知らせるべきこと……ですか?」

「ええ、実はここまで話していたことは、カルード様から止められていたことではありません。ここまでなら、カルード様も予測していたでしょう」

「え? そうなのですか?」


 そこで、フリムド様は驚くべきことを言ってきた。

 どうやら、今までのことは、お兄様から止められていたことではないらしい。

 ここまで衝撃的なことだったのに、止められていたことはないのである。これよりも、驚くような事実があるというのだろうか。


「それは……あなたの母上に関することなのです」

「え?」


 フリムド様の口から出た言葉に、私は驚いた。

 お兄様が隠そうとしていたことが、私のお母さんに関すること。その事実は、私の心を大いに揺さぶってくる。


「ど、どういうことですか?」

「……あなたの母上は、心労が祟って、亡くなったそうですね」

「ええ、そう聞いています」

「ですが、その真実は異なるものだったのです」

「異なるもの……?」


 フリムド様が言ってきたのは、私のお母さんが亡くなった理由についてだった。

 お母さんは、公爵家で暮らすようになり、それにより心を痛めて、その結果亡くなったと聞いている。

 しかし、それは真実ではないようだ。それなら、一体、お母さんは何故亡くなったというのだろうか。


「誤魔化しても仕方ないので、はっきりと言わせてもらいます。あなたの母上は、カルニラ様によって……殺害されたのです」

「えっ……?」


 告げられた真実に、私は思わず固まっていた。

 お母さんが、カルニラ様に殺された。その事実が、頭の中に何度も響いてくる。


「落ち着いてください……いや、落ち着くというのが無理だとはわかっています。ですが、どうか心を強く持って下さい」

「は、はい……」


 私は、かなり動揺していた。

 カルニラ様は、私のお母さんの命まで奪っていたのである。

 怒り、悲しみ、衝撃。色々な感情が、私の中で渦巻く。その感情の波に、押し潰されそうになってしまう。


「……その話は、本当なのですね?」

「ええ、本当です」

「一つ聞いてもいいですか? お兄様は……どうして、私にそのことを隠していたのでしょう?」

「それは……」


 動揺している私だったが、話をここで切り上げる訳にはいかなかった。

 まだ聞かなければならないことがあったからだ。

 こうして、私はフリムド様からさらなる真実を聞くことになるのだった。

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