第45話 かつての過ち
私は、フリムド様からお兄様の話を聞くことになった。
あのお兄様の過去を、知ることができるのだ。
「まず、お察しの通り、カルード様はクーテイン家の正当な血筋ではありません」
「正当な血筋ではない……」
「ええ、といっても、現当主の妾の子という訳ではありません。それなら、あなたのような扱いを受けるはずですからね」
「そうですね……」
フリムド様が話し始めたのは、お兄様がどのような立場なのかである。
まず、お兄様は私の父と妾との間にできた子供ではない。それは、なんとなくわかっていたことである。
あのカルニラ様が、妾の子を自由にさせる訳がない。だから、お兄様は私と少し異なる立場にあるのだろう。
「わかっているとは思いますが、現当主との妾の子でないということは、可能性は一つです」
「ええ……」
「カルード様は、カルニラ様ととある人物の子供なのです」
フリムド様の言葉に、私は驚いた。
わかっていたこととはいえ、実際に聞かされるとかなり衝撃的だったのだ。
お兄様は、カルニラ様と誰かの子供。私の父とは、まったく血の繋がりがなかったのである。
「フェリンド・ヴァスティオンという侯爵家の人間が、かつていたそうです。その人物が自分の本当の父親だと、カルード様は言っていました」
「かつていた?」
「ええ、既に亡くなっているそうです」
お兄様の本当の父親は、既に亡くなっているらしい。
なんというか、その言葉に私は少し寒気がした。お兄様の真実を知る者が、亡くなっている。そこに、何か作為があったのではないか。そのように考えてしまったのだ。
「……お察しの通り、彼が亡くなったのは、作為的なものがあったようです。なんでも、カルニラ様が自身の保身のために殺害したらしいです。尤も、確固たる証拠がある訳ではないようですが……」
「そ、そんな……」
フリムド様の言葉に、私はとても気分が悪くなった。
カルニラ様という人は、褒められた人間ではない。今までも、そう思ってずっと生きてきた。
しかし、まさか、殺人までしていたとは驚きである。いくらなんでも、そこまでしているとは思っていなかった。
「大丈夫ですか?」
「す、すみません……少し、気分が……」
「仕方ないことです。かなり衝撃的なことですから、無理もありません」
動揺する私を、フリムド様は宥めてくれた。
本当に、気分が悪い。元々、嫌いな人だったが、そこまで恐ろしい人だとは考えていなかった。カルニラ様と今後会う時、私はかなり怖くなるだろう。
できれば会いたくない人だったが、さらに会いたくなくなった。顔を合わせないことを、願うしかないだろう。
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