第44話 思いついた弱み
私は、フリムド様からお兄様の弱みについて聞いていた。
どうやら、彼はお兄様の弱みを知っているようだ。
しかし、それは私に話せるようなことではない。隠しておきたいようなことであるようだ。
そのことから、私は色々と予測する。お兄様は、一体どのような弱みを持っているのだろうか。
「さて、話はそれで終わりでしょうか?」
「いえ……」
フリムド様は、私との話を切り上げようとしていた。
だが、私はそれを止めた。まだ、話を切り上げられる訳にはいかないからだ。
別に、お兄様の弱みをそこまで知りたいとは思っていない。しかし、お兄様がその情報をケルヴィルに知らせた時点で、何か意図があるはずなのである。
その意図を知るためには、弱みの内容が必要であるはずだ。だから、私はフリムド様に何かを聞かなければならないのである。
「……ところで、フリムド様はお兄様に秘密を打ち明けたのですよね?」
「え?」
「それを打ち明けたということは、どういう経緯だったか、お兄様は教えてくれませんでした」
そこで、私はとあることを思いついていた。
フリムド様が、お兄様に秘密を打ち明けたという事実。それは、今回の弱みを握る上で、ある程度関係してくることであるはずだ。
「それを、僕が教えるとでも思っているのですか?」
「いえ、そうは思っていません。ただ、どうして、フリムド様がそれをお兄様に打ち明けたのでしょうか?」
「どういう意味ですか?」
「お兄様も、フリムド様や私と同じだったのではないでしょうか?」
フリムド様は、私に対して共感を示していた。だから、自身の秘密を打ち明けてくれたのだ。
それなら、お兄様も同じだったのではないだろうか。そのような疑念から、私はこの論を提唱したのである。
私の言葉に、フリムド様は目を丸くしていた。その反応は、図星だったということだろう。
「……お兄様が」
お兄様の弱みを理解して、私は驚いていた。
カルニラ様と共通の弱みがこれならば、とても納得がいく。
お兄様が、お父様の血を引いていないとなれば、彼はクーテイン家にいられなくなる。同時に、不貞を働いたお母様も立場が悪くなるだろう。正に、一蓮托生の弱みである。
「……仕方ありませんか」
「え?」
フリムド様は、ゆっくりと呟いた。
その表情は、先程までと比べて引き締まっている。
何か、特別なことを話そうとしているのかもしれない。
「これからあなたに話すことは、カルード様にも止められていることです。ですが、これをあなたに話すことに意味があると、僕は確信しています」
「はい……」
どうやら、フリムド様は何か話す気になってくれたようだ。
こうして、私はフリムド様から話を聞くことになったのだった。
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