第42話 お互いの境遇

 私とフリムド様は、昼休みに個室に来ていた。

 この学校には、生徒が使える話し合える部屋があるのだ。完全防音で、外に聞こえることはないため、秘密の話をするのに最適場所である。


「えっと……まず、お兄様からフリムド様のことは聞きました」

「そうですか」


 とりあえず、私はフリムド様のことから話すことにした。

 私が真実を知ったと言っても、フリムド様は特に表情を変えることがない。

 恐らく、フリムド様はわかっていたのだろう。私がお兄様に聞くことも、お兄様が話すことも、全て予測できることだったはずだ。

 特に、お兄様とフリムド様はわかり合っているような雰囲気だった。私が聞けば、お兄様が答えるという信頼感を持っていることは間違いないだろう。


「フリムド様も……私と同じだったのですね」

「ええ、同じです。ただ、あなたに比べれば、僕の境遇は甘いものかもしれませんが……」

「いえ、そんなことはないと思います。王族という難しい立場なのですから、私はフリムド様の方が厳しい境遇だったのではないかと思います」


 フリムド様は、私の方が厳しい境遇だと言ってきた。

 だが、そのようなことはないだろう。

 王族という立場は、公爵令嬢よりも難しい立場である。しかも、フリムド様の場合は、周囲に秘匿されていることだ。私より、色々と難しい部分があったのではないだろうか。


「いえ、僕の方は簡単ですよ。王妃や兄弟達から疎まれていた。ただ、それだけです。あなたと違って軟禁されていた訳ではありませんし、他の人から何かを言われることはありませんでした。あなたに比べれば、かなり甘いことです」

「そうでしょうか……」

「ええ、そうだと思います」


 しかし、私の意見はフリムド様によって否定されてしまった。

 恐らく、この議論に結論など出ないだろう。私達は、お互いの境遇を理解しているが、全て知っている訳ではない。

 そのため、お互いに気を遣って、相手の方が不幸だったと言い続けるだろう。これは、早い所話を終わらせた方が良さそうだ。


「あ、もう一つ、フリムド様に聞きたいことがあったのです」

「え? そうなのですか?」


 そこで、私は話を切り替えることにした。

 フリムド様に聞かなければならないことがあったため、話を転換できるのは都合が良かった。時間も惜しいので、こちらの話を聞くとしよう。

 フリムド様は、私の言葉に少し目を丸くしている。当然のことではあるが、こちらの話はフリムド様に予測できるものではない。驚くのも、当たり前である。

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