第39話 考えるべきこと
ケルヴィルが帰った後、私は一人で考えていた。
お兄様とカルニラ様は、一体何を話していたのだろうか。
「弱みを握っている……それは、どういうことなんだろう?」
弱みを握っているという発言は、かなり恐ろしいものだ。
しかも、それが一蓮托生であるというのは、さらに疑念が深くなる要素である。
「あれ?」
そこで、私はあることに気づいた。
よく考えてみれば、ケルヴィルはどうして二人の会話を聞けたのだろうか。
馬車でフリムド様の話をしている時、お兄様は外に会話が漏れないように魔法がかかっていると言っていた。そのような魔法があるのに、会話が漏れることがあるのだろうか。
カルニラ様はともかく、お兄様がそのようなミスをするとは思えない。あの人が、このような凡ミスをするのには、何か意味があるのではないだろうか。
「でも……」
しかし、わざと聞こえるようにしていた理由がまったくわからない。
お兄様がミスをするとは思えないが、わざとでも意味がわからないのだ。
その会話を、ケルヴィルに聞かせる必要があった。そのように考えればいいのだろうか。
だが、それでも結局意味はわからない。ケルヴィルに聞かせる必要がある会話だとは思えないからだ。
「私に?」
それなら、私に聞かせるためだったと考えればいいのだろうか。
ケルヴィルがその会話を聞いて、一人で抱えきれないと読み、状況的に私に相談するように仕向けた。そう考えられない訳ではない。
しかし、それは少し回りくどい気がする。そのようなことをするくらいなら、直接私に言えばいいのではないだろうか。
「わからないか……」
結局、いくら考えても答えは出そうになかった。
一体、その二人の会話はどういうことだったのだろうか。
「とりあえず、私は私がやるべきことをするしかないのかな……」
恐らく、色々と考えても答えは出ないだろう。お兄様が何を考えていたかなど、複雑すぎてわかりそうにない。
それなら、私は私にできることをするべきだろう。ケルヴィルを安心させるのだ。それが、今の私にできる最善のことだろう。
「ケルヴィルを……安心させる」
だが、それはそれで難しいことではあった。
ケルヴィルの不安を取り除くためには、どうすればいいのだろうか。
よく考えてみれば、私が色々と言っても彼の不安は取り除かれない気がする。結局、本人がどう決着をつけるかが重要なのではないだろうか。
私にできるのは、励まし続けることだけかもしれない。それで、ケルヴィル本人が決着するのを待つのが一番なのではないだろうか。
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