第35話 同じ立場
私は、馬車の中でお兄様と話していた。
そこで、私はお兄様から衝撃的な事実を知らされていた。
フリムド様は、正当な王子ではない。王子が私に気持ちがわかると言ってきたのは、それが理由だったのだろう。
「奴は、王妃との間に生まれた子供ではない。ある女性との間に国王の隠し子だ」
「隠し子……」
「尤も、これは王国では秘匿にされている。この国は、基本的に一夫一妻。国王がその禁を破るというのは世間体が悪い。故に、この事実を知る者はほとんどいない」
「そ、そうなのですね……」
お兄様の言葉に、私は思わず息を呑んだ。
王国に、色々と隠し事があることはわかっていたつもりだ。
だが、それを実際に聞くとあまりいい気分にはなれない。
国王は己に悪評がつかないために、事実を秘匿した。その事実は、なんだか気持ちが悪くなるものだ。
「当然のことではあるが、王妃やその子供達は、奴と血が繋がっていないことは知っていた。それによって、奴は母親や親族達からは疎まれていたらしい」
「それって……」
「丁度、お前と同じだということだな……」
私のことをわかっているという言葉の意味を、私はそこでやっと理解した。
フリムド様は、私と同じような経験をしてきたのだ。だから、あのような悲しい目で、あのように悲しみを語ることができたのだろう。
王子相手にそのような感情を得ることは間違っているとは思うが、私はフリムド様に親近感のようなものを抱いていた。同じ生まれというだけで、何故か身近に思えるのだ。
「でも……どうして、お兄様はそれを知っているのですか?」
そこで、私はお兄様に気になったことを聞いてみた。
お兄様が、何故その事実を知っているのか。それは、かなり気になるものである。
友人だからといって、このような事実を知っているのはおかしい。その経緯を聞いておいた方が、お兄様とフリムド様の関係を理解できるような気がする。
「……奴から直接聞いたからだ」
「直接聞いた?」
お兄様の答えは、少し違和感があるものだった。
普通に考えて、フリムド様が自分の秘密を打ち明けるとは思えない。話すことが、自分にとっても相手にとっても利益にならないはずだからだ。
それ程までに、お兄様はフリムド様と親しかったのだろうか。いや、親しかったのなら、猶更話さないはずである。親友にわざわざ危険な秘密を握らせておく意味はないはずだ。
恐らく、お兄様は何かを隠している。それは、フリムド様の秘密よりも、隠さなければならないことなのだろうか。
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