第34話 友人として

 私は、馬車の中でお兄様と話していた。

 フリムド様が何者なのか、私はお兄様に問いかけたのである。

 私の予測は、フリムド様が私と同じような立場だったのではないかというものだ。そうでなければ、あのような言葉を私にかけられなかったはずである。


「……当然のことではあるが、これから俺が言うことは他言無用だ。もしお前がこれを他者に漏らしたのなら、命はないと思った方がいい」

「他言無用……わかっています」


 お兄様は、ゆっくりとそのようなことを言ってきた。

 恐らく、フリムド様に関することを喋ってくれる気になったのだろう。

 そして、これは絶対に喋ってはならないことだ。誰かに喋る気など元々なかったが、本当に絶対に喋らないと誓うべきだろう。


「外に聞こえたりはしないでしょうか?」

「この馬車の会話は魔法によって、漏れないようになっている。その心配はする必要はない」

「そうですか……」


 声が漏れることを危惧したが、その心配はないらしい。

 それなら、安心して話すことができるだろう。絶対に外に漏れてはいけないことだ。その辺りは、お兄様も抜かりがない。


「俺がこれを知っているのは、公爵家の人間としてではない。奴……フリムドの一人の友人として、俺はこの真実を心に秘めている」

「一人の友人として……」


 お兄様の言葉は、少し意外なものだった。

 この人が、このように友人として話すなどと言うことは、想像していなかったことである。

 ただ、考えてみれば、お兄様も血の通った人間だ。このように情があることは、驚くべきことではないだろう。


「そして、お前に話すのはフリムドが、俺がお前に話すように促したからだ。奴がお前に隙を見せたということは、それに他ならない」

「そうだと思います……」


 フリムド様は、私を誘導していた。

 そのため、お兄様が言っていることは間違いないはずだ。

 もしかして、お兄様とフリムド様の中で、ある程度こういうことは話していたのだろうか。フリムド様が促し、お兄様に聞く。今までの会話からは、そういう流れを作っていたように思える。

 それとも、お互いに何も言わずに理解したのだろうか。その可能性もない訳ではない。そうだとすると、素晴らしい相互理解である。


「結論から話す。奴は正当な王子ではない」

「……そういうことなのですね」


 お兄様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。

 驚きは、あまりなかった。ある程度、それは予想していたことだからだ。

 やはり、フリムド様は正当な王子ではないようである。

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