第33話 そこまで至るには
入学式を終えてから、私はお兄様と馬車に乗っていた。
クーテイン家の屋敷に帰るのだ。
魔法学校には、一応寮と呼ばれる場所がある。多くの者達は、そこで暮らすことになっている。
だが、私は屋敷から毎日通うことになっていた。これは、世間体を意識した措置であるらしい。複雑な立場である私を、寮に置いておきたくないというクーテイン家の意向であるようだ。
私としては屋敷から離れたいが、別に逆らうようなことでもないと思っている。
屋敷に帰れば、嫌な人達と接しなければならないが、それ以外は特に問題ない。最近はその人達も比較的静かなので、過ごしやすいといえるだろう。
「……お兄様、少し聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
静かな馬車の中で、私はお兄様に話しかけていた。
お兄様には、聞かなければならないことがある。
その質問に、お兄様が答えてくれるかはわからない。ただ、少なくともフリムド様は、そうするように言っていた。駄目だったら仕方ないので、聞いてみればいいだけだろう。
「フリムド様は……何者なのですか?」
「ほう?」
私の質問に、お兄様は口の端を歪めた。
よくわからないが、お兄様は嬉しそうだ。
私のこの質問に、嬉しくなるような要素はなかったと思うのだが、一体どうしたというのだろう。
「その質問に答えるかどうかは、お前がどうしてその質問をするに至ったかを聞いてからの方がいいだろう。俺が納得すれば、真実を話してやってもいい」
「……わかりました」
私の質問に返ってきたのは、答えではなかった。
質問するに至った経緯を説明する。恐らく、気軽に教えられることではないのだろう。だから、私がどうしてそのような思考に至ったかを聞いて、判断しようとしているのだ。
「……今日、フリムド様は私のことを理解していると言ってきました。妾の子である私に、そのようなことを言える人は多くありません。だから、フリムド様には何かあるのではないかと思ったのです」
「お前は、その何かとは、なんだと思っている?」
私が説明すると、お兄様はそのような質問を返してきた。
フリムド様に何があるか。その答えは、ある程度見当がついているものだ。それを理解しているから、お兄様もこのような質問をしてきたのだろう。
「彼が……私と同じか、それに類するものなのではないかと思っています」
「なるほど……」
私の言葉に、お兄様はゆっくりと頷いた。
それが、何を表すかはわからない。次の言葉を待つしかないだろう。
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