第31話 重要なこと
私は、担任の先生が来るまでの待ち時間、フリムド様と話していた。
フリムド様は、友人がいないから、私に話しかけているようだが、それは本当かどうかわからない。
前に会った時は思わなかったが、フリムド様は不思議な雰囲気の人だ。真実を言っているようにも、嘘を言っているようにも見える。そのような喋り方をしてくるのだ。
だが、考えてみれば、彼は天下の王族である。王族が、簡単に素顔を見せることはできないだろう。そういう面を考慮すれば、彼の心が読めないのは当然なのかもしれない。
「……でも、私に話しかけられると注目されますよ?」
「注目?」
「知っているとは思いますが、私はクーテイン家の妾の子です。そんな私に話しかけると、フリムド様も侮られるかもしれませんよ?」
フリムド様の言葉が真実かわからなかったため、それはもう気にしないことにした。
ただ、どちらにせよ、私に話しかけることはフリムド様の利にならないだろう。
私は、クーテイン家の妾の子である。そんな私は、悪い意味で注目を集めてしまう。妾の子と話していることで、フリムド様にも変な噂が飛ぶのは、私の望むところではない。
「……そんなことは関係ありませんよ」
「え?」
「誰の子供だとか、どんな家の出身なのかとか、そういうものにこだわっているのは、上辺しか見ない人達です。本当に重要なのは、そんなものではありません」
先程と違い、フリムド様の表情は少し変わっていた。
それは、ほんの些細な変化だ。特に気に止める必要がないように思えるその変化が、私はどうしようもなく気になっていた。
その悲しそうな瞳の奥で、彼は何を考えているのだろうか。
「僕は人の中身を見たいと思っています」
「……フリムド様に、私の中身がわかるのですか?」
私は思わず、フリムド様の言葉に反応していた。
正直、フリムド様に私の中身がわかるとは思えなかったからだ。
だが、フリムド様は笑っている。少し語気を強めた私の言葉を、簡単に受け流してきたのだ。
「わかります。少なくとも、この場にいる誰よりも、僕はあなたの心の内を理解していると思いますよ」
「私の心の内?」
フリムド様の言葉に、私は少し疑問を感じていた。
他人の気持ちがわかるなど、ここまではっきりと口にできることではない。私のような特別な立場にある者に理解を示すとなれば、もっと口にしにくい言葉だろう。
それなのに、フリムド様ははっきりとそれを口にした。それに、何も意味がないなどと思える程、私も考えが及ばない訳ではない。
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