第30話 再びの会話
私は、入学式を終えて、教室に戻って来ていた。
この教室で、担任の先生から今後の説明があるらしい。
今日一日の日程は、それで終わりだ。初日であるためか、まだ特に授業が始まったりはしないようである。
ただ、まだ先生は来ていない。今は、休憩時間なのだ。
周りでは、同級生達が色々と話している。ただ、その視線が遠慮がちに私の方に向けられていることは明白だ。
その理由はわかっている。ある人物が、私に話しかけてきているからだ。
「いやあ、校長先生の言葉は素晴らしいものでしたね……」
「え、ええ……」
私は、またフリムド様に話しかけられていた。
何故かわからないが、休憩時間になった時、私の元に来たのである。
それで、校長先生の言葉などについて話し始めた。正直、あまり聞いていなかったので、少し答え辛い会話である。
本当に、フリムド様はどうして私に話しかけてくるのだろう。この際、聞いてみてもいいかもしれない。
「僕達も、三年間で頑張って立派な大人になりましょう」
「あの……少しいいでしょうか?」
「はい? なんでしょうか?」
私が今までの流れを遮って質問をしようとすると、フリムド様は特に驚きもせず、それを受け入れてくれた。
どうやら、私が何か質問したいと思っていることを理解していたようだ。恐らく、質問の内容も既に予測しているのだろう。
「どうして、私にここまで話しかけてくるのですか?」
「そういう質問が、来ると思っていました」
私の質問に、フリムド様はそのように返してきた。
やはり、私の質問を予測していたようだ。
ということは、自分が私に話しかけていることが、少しおかしいことは自覚していたということである。
「といっても、簡単な話です。僕は友人がいないのです」
「え?」
「友人がいないから、同じく友人がいなそうなあなたの元に来ている。寂しいですからね。それで納得して頂けませんか?」
フリムド様の言葉に、私は驚いた。
どうやら、フリムド様は友人がいないから、私に話しかけてきているらしい。
しかし、これは明らかにおかしい。先程、フリムド様は色々な人と挨拶を交わしていた。友人がいないとは思えない。
付き合いなのかもしれないが、休憩時間を潰すくらいには話ができるのではないだろうか。それで、わざわざ私の元に来る理由になるとは思えない。
「冗談ですか?」
「ふふ、どうでしょうか」
私の質問に、フリムド様は笑顔で返してきた。
その反応がどういう意味なのか、よくわからない。
結局、フリムド様に友人がいるかいないかはわからなかった。
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