第29話 入学式の中で

 私は、魔法学校の入学式に来ていた。

 現在は、講堂に集められて入学式を執り行っている。

 前方では、校長先生らしい人が色々と言っている。学校に入って、色々と学んで立派な大人になりなさい。そのようなことを述べているのだ。

 はっきり言って、その言葉は頭の中に入って来ない。それよりも、気になっていることがあるからだ。


「皆さんは、これからこの三年間、この学校で様々なことを学んでいきます」


 よくわからないが、フリムド様は私に何度も話しかけてきた。

 知り合いが多かったのか、色々な人と話していた所まではいい。

 しかし、何故かその後、私の元に戻って来たのである。それで、世間話を始められてしまい、とても困惑した。

 王子という存在は、教室でもかなり目立つ。そんな王子に話しかけられている私も、当然目立っていた。お兄様に言われていたため、堂々するように心がけていたが、かなり緊張して苦しかったものである。


「ここで学んだことは、皆さんの糧になります。その糧は、必ず無駄にならないことを約束しましょう」


 私が疑問に思っているのは、フリムド様がやけに馴れ馴れしいことだ。

 私とフリムド様は、一ヶ月前の事件で初めて出会った。その後、一回も会っていない。

 それなのに、どうしてあそこまで私に話しかけてくるのだろうか。それが、どうしてもわからないのだ。

 もしかして、教室で孤立している私を気にかけてくれているのだろうか。そうだとしたら、優しいと思う。ただ、若干ありがた迷惑な気もする。


「三年後、皆さんは立派な大人になっていることでしょう」


 そもそも、妾の子である私に話しかけるのは、王族としてどうなのだろうか。

 はっきり言って、妾の子というのは外部からの心証が悪い。私に話しかけることで、フリムド様の印象が悪くなる可能性は低くないだろう。

 放っておいてもらった方が、お互いのためになるのではないだろうか。考えれば考える程、そう思ってしまう。

 それだけ、フリムド様が優しい人とも考えられる。結局、フリムド様が何を考えているのかはわからないのだ。


「卒業式の日、皆さんがどのような大人になっているか、それを楽しみにしています」


 色々と考えている内に、校長先生の話は終わっていた。

 内容はあまり入って来なかったが、要は三年間頑張れということだろう。

 もちろん、この三年間は頑張るつもりだ。頑張らなければ、ここに来た意味がないからである。

 聖女になれるかどうかなど関係なく、私はこの三年間で色々なことを学ばなければならない。知識や経験を得て、強くなるのだ。

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