第26話 強く生きること

 私は、馬車の中でお兄様と話していた。

 お兄様は、学校で何を言われるか心配していた私に、厳しい言葉をかけてきた。

 それは、私が忘れていたことである。何を言われても立ち向かう覚悟、それを私は決めていたはずだったのだ。


「少しはましな顔つきになったかと思ったが、まだ理解していなかったようだな……お前は強くならなければならない。そうしなければならない境遇にあるのだ」

「はい……わかっています」

「もしお前を妾の子と呼び、罵倒にする者がいるなら実力で黙らせろ。お前に敵わないと理解させれば、相手は黙る。ただそれだけのことだ」

「はい……」


 お兄様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。

 確かに、お兄様の言う通りだ。相手が何を言ってきても、自分の実力で黙らせればいい。

 魔法学校であるならば、それは魔法や勉学の成績だろうか。とにかく、圧倒的な実力差を見せて、相手を屈服させればいいのだ。


「くくく……いい顔になってきたな。それでこそ、我が妹だ」


 私は、妾の子として生まれてきた。

 その生まれは、どう足掻いても変えることができない。

 だから、私は強くなるしかないのだ。自分自身が強くならなければ、私は生きていけないのである。


「さて……見えてきたか」

「え?」


 そこで、お兄様は窓の外を見た。

 私も、それに釣られて、窓の外を見る。

 すると、大きな建物が見えてきた。口振りからして、あれが魔法学校なのだろう。


「あれが、魔法学校なのですか?」

「ああ、そうだ」

「あそこが……」


 その建物を、私はしっかりと見据える。

 あの中で、私には色々な困難が降りかかってくるのだろう。

 初めての学校生活は当然わからないことばかりだ。それだけでも大変なのに、私は妾の子であるという偏見とも戦わなければならない。かなり、大変なものになるだろう。


「ああ、一ついいことを教えておいてやる」

「え? なんですか?」


 そこで、お兄様は思い出したかのように話しかけてきた。

 何か、いいことを教えてくれるようだ。

 もしかして、学校生活をどうしたら円滑に進められるかとかだろうか。それなら、非常にありがたい。


「あそこには、第三王子のフリムド殿下も通うことになっている。お前がどれだけ関わることになるかは知らんが、覚悟しておくことだな」

「え?」


 お兄様の言葉に、私は驚いた。

 なんだか、困難が増えたような気がする。

 いや、フリムド様がいるからといって、別に困難になる訳ではないだろう。そこまで、気にするべきことではないはずだ。

 そんなことを考えながら、私は魔法学校に向かうのだった。

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