第25話 入学の日

 お兄様との話し合いから、一ヶ月が経っていた。

 あれから色々と手続きを済ませて、私は魔法学校に入ることになっていた。

 今の所、カルニラ様や姉達は、私に何も言ってきていない。恐らく、お兄様が言葉通り押さえつけてくれているのだろう。


「ふん……」

「……」


 現在、私はお兄様と一緒に馬車に乗っている。魔法学校に向かっているのだ。

 今日は、魔法学校の入学式である。そのため、私はとても緊張していた。緊張し過ぎて、お兄様と何も話せないくらいだ。


「……何を緊張している?」

「え? あ、はい……」


 そんな私のことを、お兄様は心配してくれた。

 ただ、大変緊張している私に、お兄様は少し呆れているような気もする。私の緊張は、それ程すごいものなのだろうか。


「お前が緊張することが理解できない訳ではないが、そこまで緊張する必要はない。魔法学校などそれ程恐れる場所ではない」

「で、でも……私、そもそも、ほとんど外に出たことがないので……」

「ほう……確かに、それは考慮してもいいことかもしれんな」


 私の言葉に、お兄様は少し表情を変えた。

 もしかしたら、私は失言をしてしまったかもしれない。

 私が外に出られなかったのは、クーテイン家にほぼ監禁されていたからだ。お兄様は、その責任を感じているのかもしれない。


「まあ、俺もついているのだ。そこまで緊張する必要はない」

「そ、そうですよね。お兄様がついているのですから、大丈夫ですよね」


 私は、とりあえずお兄様の言葉に頷いておいた。

 ただ、お兄様が頼りになるのも事実である。一人で魔法学校に行けと言われていたら、もっと緊張していただろう。

 だから、お兄様がいてくれるのはありがたい。


「それにしても、私は学校でどのように言われるのでしょうか?」

「どのように?」

「えっと……妾の子というのは知られている訳ですから、色々と言われるのではないかと思いまして……」


 そこで、私はお兄様に心配事を聞いてみた。

 私が学校でどのように言われるか。それは、とても心配なことである。


「色々と言われるから、どうだというのだ?」

「え?」

「お前は強くなったはずだ。母上や俺にも堂々と意見を言えるようになった。その強さを使う時がいつだと思っている?」

「それは……」


 お兄様の言葉に、私は理解した。

 今まで、私は色々と言われることを恐れていた。だから、何も言わずに黙って部屋に閉じこもってばかりだったのである。

 だが、私は先日、それに打ち勝つ強さを身に着けた。誰に何を言われてもいい。そのように考えられるような強さを得たのだ。

 屋敷と学校でも、それは同じだろう。何を言われるかと怯えるのではなく、立ち向かわなければならない。それを、お兄様は思い出させてくれたのだ。

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