第19話 突然の高笑い

 私は、媚を売ろうとしていた義母と姉達を押しのけて、廊下を進んで行った。

 好き放題言ったため、後であの人達から色々と言われるかもしれない。

 しかし、私はもう何を言われても構わないと思っている。あの三人に、私は負けるつもりはない。何かしてくるなら、それに対抗するだけだ。


「あれ?」


 そんなことを思っていた私は、角を曲がった先にある人物がいることに気づいた。

 壁に寄りかかっているカルード様を発見したのだ。


「カルード様?」

「ナルネアか、待っていたぞ」

「あ、はい……」


 部屋で待っているはずのカルード様が、どうしてここにいるのだろう。

 そう思った私だったが、カルード様は何事もなかったかのような態度だ。その態度に、聞かない方がいいのかとまで思ってしまう。


「さて、俺の部屋に行くぞ」

「え? あ、はい……」


 歩き始めたカルード様に、私はついて行く。

 よくわからないが、カルード様の部屋に向かうようだ。元々そこが目的地なので構わないのだが、何故こんな所にいたのかは説明してくれないようだ。

 まさか、私を迎えに来てくれたのだろうか。いや、そんなはずはない。私の知っているカルード様は、そのようなことをする人ではないはずである。

 そんなことを考えている内に、私は目的地まで着いていた。カルード様が何も言わずに入っていくので、とりあえず私も続く。


「ふふっ……」

「え?」

「ふっはははははははっ!」

「ええっ!?」


 部屋の中に入ってから、カルード様は急に高笑いし始めた。

 突然、そんなことをされたら、当然驚く。一体、カルード様はどうしてしまったのだろう。どこか、頭でも打ったのだろうか。


「カ、カルード様? どうしたのですか?」

「ふん……」

「え? カルード様?」


 私の質問に答えず、カルード様は椅子に座った。

 いつも私を待ち受けている体勢だ。とりあえず、私は机の前に立つ。これも、カルード様と話す時の定位置である。


「母上や愚妹達にかけた言葉、見事だったぞ」

「え? あ、はい……」

「あの愚か者達が怯える様は、中々に滑稽だった。俺も、久し振りに面白いものが見れた」


 私が前に立ってから、カルード様はそのように言い出した。

 どうやら、カルード様はカルニラ様達が私に怯えていた様を笑っていたようだ。

 その事実は、私にとって驚くべきものだった。カルード様が、あの様を笑うような人だとは思っていなかったからだ。

 確かに、元々あまりあの人達のことを好んでいなかったとは思うが、あのように笑う程嫌っていたとは驚きである。いや、嫌っていたとは限らないだろう。単純に、あの様が面白かっただけなのかもしれない。

 どちらにせよ、カルード様があのように笑うのは意外である。

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