第18話 その態度は

 私は、カルード様の部屋に向かう途中、義母と姉達と出会った。

 いつもなら会ったらすぐに罵倒してくる彼女達だったが、何故か何も言ってこない。その様子は、とても奇妙なものである。


「あなたの評価を……少し改めなければなりませんね」

「は?」

「あなたには、聖女としての才能がある。それを認めないといけないようです」


 そこで、カルニラ様はそのように言ってきた。

 私の評価を改めなければならない。私に聖女としての才能がある。そのような言葉は、カルニラ様から出てくるはずがない言葉だ。

 なんだか、様子がおかしい。この人が、私を褒めるなど、普通なら絶対にあり得ないことだ。

 お母さんを恨んでいる彼女にとって、私はこの世で最も忌むべき存在のはずである。今まで、ずっとそういう扱いを受けてきたので、それは間違いない。

 だから、この言葉にも何か裏がある。私は、すぐにそれに気づいた。言葉を放った後、カルニラ様の表情が少し強張っているのも、それを裏付けている。


「そうですね……あなたが聖女になれば、クーテイン家の発展に繋がります」

「ええ、精々頑張ってください」


 キルマリ様、クーテリナ様も、私に対して好意的な態度で接してきた。

 尤も、それは表面的なものだろう。本当は嫌なのが、態度に現れている。カルニラ様と違って、こちらは露骨だ。もう少し隠す努力をした方がいいのではないだろうか。

 それらのことから、私はこの人達が何を考えているのか理解できてきた。どうやら、私に媚を売っているようだ。

 恐らく、私が聖女になり、お姫様になるかもしれないと思って、今の所は態度を改めた方がいいと判断したのだろう。私が権力を持った時、コントロールしやすいように、今は罵倒することはとりあえずやめておこうと話し合った。そんな感じが、今までの態度から見えてくる。


「……今更」

「え?」

「今更、そんな態度をとられた所で、私があなた達を許すとでも思っているんですか?」


 そんな彼女達に、私は怒りを覚えていた。

 これまでの数年間、私はずっとこの三人に罵倒され続けてきた。妾の子だからと迫害されて、私は必死にそれに耐えてきたのだ。

 その数年間が、この一瞬で消える訳がない。只でさえそうなのに、表面上だけ取り繕っているという事実も、私の怒りを加速させた。


「あなた達がやってきたことを、私は許しません。もし許して欲しいなら、少なくともその表面上だけ取り繕った態度を改めてください。その態度で、何度も謝ってくれたら、もしかしたら許すかもしれません」

「なっ……」


 私は、それだけ言って歩き始めた。

 三人は、何も言わず道を空けてきた。もしかしたら、私の気迫に押されたのかもしれない。

 こうして、私はカルード様の部屋に向かうのだった。

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