第17話 呼び出しの前に
フリムド様が屋敷を訪問してから、しばらく経っていた。
私は、いつも通り屋根裏部屋という小さな世界で暮らしていた。ただ、その生活は少しだけ変化している。
ケルヴィルとコーリエが、暇な時間に遊びに来てくれるようになったのだ。二人のおかげで、以前よりは楽しい生活になっている。
「さて……」
そんな私は、屋根裏部屋からカルード様の部屋に向かっていた。
今日は、彼から呼び出されているのだ。
以前から、カルード様は私を呼び出していた。私の顔を見て、嫌味を言ってくる。それが、いつものパターンだ。
ただ、今回は少しだけいつもよりは気が楽である。カルード様が、思ったよりも普通の人であるとわかったからだ。
カルード様は、他の人達とは違い、公正な判断をする。そのことがわかっているだけでも、少し気は楽なのだ。
「でも……」
しかし、まったく何も思っていない訳ではない。結局、嫌なことを言われるのは変わらないので、気は重いのだ。
カルード様は、単純に人として私を駄目だと思っているため、あのようなことを言ってくる。その事実は、私にとってはとても悲しいものだった。
だが、なんとなく彼の考えを理解できない訳ではない。私は、かなり消極的になり、怠惰な毎日を過ごしていた。腐っていたといっても、過言ではないだろう。
そういう私を見て、カルード様が怒っていたというなら、私は納得できる。改めて振り返ってみると、そう思えるのだ。
だから、今日は少しだけ気合を入れている。カルード様に評価してもらえるように、消極的な私は卒業して頑張ってみよう。そのように考えているのだ。
「あら?」
「あっ……」
「なっ……」
「うん?」
そんな私の目の前に、見知った三人が現れた。
曲がり角の先に、カルニラ様、キルマリ様、クーテリナ様の三人がいたのだ。
以前も、カルード様の部屋に行く時はこの三人と会った。その時は、不運だと思っていたが、もう今はどうでもいい。
この三人が言ってくることなど、気にする必要はないことだ。そのため、何を言われても私は聞かないことにする。蛙の鳴き声くらいに思うことにしようと決めたのだ。
「……」
「……」
「……」
「うん?」
だが、そこで私は三人の様子が少しおかしいことに気づいた。
私の顔を見ると、いつもなら嬉々として罵倒してくるはずだ。
しかし、今は一言も発さないのである。もしかして、罵倒のバリエーションがなくなったのだろうか。
いや、それは関係ない。言われているのはいつも同じようなことだ。彼女達が、バリエーションなど考えているはずはない。
それなら、何を考えているのだろうか。何も言うことがないのなら、邪魔なので道を空けて欲しいのだが。
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