第16話 別れの寂しさ
私は、コーリエとケルヴィルと話をしていた。
「あ、お姉様、そろそろ私達は帰らないといけません」
「あ、そうなの?」
しばらく話してから、コーリエがそのように言ってきた。
どうやら、もう帰らないといけないようだ。
それは、少し残念である。楽しい時間だったので、終わってしまうのは悲しい。
「本当はもっと、ここにいたいのですけど、ここに来たことをお母様に知られてはいけないので、早く帰らないといけないのです」
「そっか。それは、残念だね……」
二人は、カルニラ様にばれてはいけないため、早く帰らないといけないらしい。
よく考えてみれば、私の部屋に来たなど、カルニラ様に知られたら、絶対に説教されるだろう。それを防ぐためには、早く帰らないとならないのである。
こういう部分は、とてももどかしいものだ。やはり、私の立場というのは不便である。
「それでは、お姉様、今日はこれで失礼します。あ、また隙があったら、ここに来てもよろしいでしょうか?」
「あ、うん。いつでも、歓迎するよ。私、ここからほとんど出られないし、話し相手がいるのは嬉しいし……」
「そうですか。それなら、絶対にまた来ますね」
コーリエの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
また来てくれるのは、とても嬉しい。基本的に暇なので、話し相手は大歓迎である。
「さあ、ケルヴィル、行こうか」
「うん。お姉様、さようなら」
「それでは、また」
「あ、うん、さようなら。またね」
私は手を振って、コーリエとケルヴィルと別れた。
なんだか、無性に悲しくなってくる。一人というのは慣れていたはずだが、こんなにも寂しいものだっただろうか。
三人でいると狭いと思っていた部屋が、今は広く感じる。このように思うのは、かなり久し振りだ。
この屋根裏部屋には、かつてもう一人住んでいた。私のお母さんだ。
お母さんが亡くなった時は、とても寂しく、この部屋を広く感じたものである。その時以来の感覚なので、本当に久し振りだ。
ただ、今回はまた会えるという希望がある。そのため、あの時程のショックではない。
「そういえば、ケルヴィルはあまり喋らなかったような……」
色々と考えてから、私はそのことを思い出した。
そういえば、ケルヴィルはほとんど喋っていなかったのだ。ただ、別に気まずそうにしていた訳でもない。最初は緊張していたようだが、後半は楽しそうにしていた気がする。
単純に、話すのがあまり得意ではないだろうか。ずっと喋っていたコーリエとは、対照的である。
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