第15話 聖女になれば

 私は、コーリエとケルヴィルと話していた。

 二人は、カルード様の教育を受けて育ってきたらしい。だから、母親や姉達から悪影響を受けず、真っ直ぐに育ったようである。


「そういえば、お姉様は魔法学校に入られるのですよね?」

「え? 入るかどうかはまだわからないけど……まあ、行けるなら行ってみたいかな」


 そこで、コーリエは私に魔法学校の話を振ってきた。

 コーリエの中では、魔法学校に入ることになっているが、それはまだわからない。入る可能性の方が、低いくらいではないだろうか。

 ただ、個人的には行ってみたいと思っている。この退屈な屋敷にいるよりは、魔法学校に行った方がまだ楽しそうだからだ。


「もし魔法学校で優秀な成績を収めれば、聖女にもなれますね」

「聖女か……」


 魔法学校で優秀な成績を収めれば、聖女になることもできるらしい。

 フリムド様も、私に聖女を目指すべきだと言ってきていた。やはり、魔法学校に入る以上、そこを目指すべきなのだろうか。


「でも、フリムド様も中々大胆なことを言ってきますよね?」

「え? 大胆なこと?」

「あ、もしかして、知らないのですか? 次の聖女は、フリムド様の婚約者になる予定なのですよ?」

「え?」


 コーリエの言葉に、私は驚いた。

 聖女になると、フリムド様の婚約者になる。そのような事情があるなど、まったく知らなかった。

 そのような事情があるなら、確かにフリムド様は大胆なことを言ってきたといえる。実質的に、自分の婚約者になって欲しいと言っているようなものだからだ。


「なるほど……でも、まあ、フリムド様もそういう意図はなかったんじゃないかな?」

「そうなのでしょうか?」

「そうだと思う」


 尤も、フリムド様にはそんな意図などないはずである。単に、魔法の才能を評価していたから、そう言っただけなのではないだろうか。

 いくらなんでも、あの一瞬で私を婚約者にしようなどと思うはずがない。


「でも、もし婚約者になったら、お姫様になるかもしれないということですから、かなりすごいことですよね」

「お姫様……そうなるんだ」

「そうでなくても、王族の仲間入りですから、お姫様でなくてもすごいと思います」


 もし婚約者になったら、お姫様になるかもしれない。確かに、それはすごいことである。

 なんだか、雲の上の話だ。私に可能性があるとしても、あまり想像できない。

 しかし、私にも確かにそのような可能性があるのだ。魔法学校に入れて、優秀な成績を収めれば、そうなるかもしれないのである。

 考えれば考える程、無理な気がしてきた。そもそも、私は魔法学校にすら入れないのではないだろうか。

 そんなことを考えながら、私は話を続けるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る