第14話 教育者の影響

 私は、屋根裏部屋でケルヴィルとコーリエと話していた。

 二人は、私のことを好きでも嫌いでもなかったらしい。関わっていなかったので、判断ができなかったようだ。母親や姉達からは色々と言われていたようだが、それに影響を受けることもなかったようである。

 この二人が、あの人達の元で真っ直ぐ育ったことは、驚くべきことだ。親が歪んでいると、子供も影響を受けそうな気がするのだが、そうでもないらしい。


「正直、お母様やお姉様の言葉は少々狂っているというか……偏見に溢れているようで、あまり信頼できないのです」

「あ、そうなんだ……」


 そこで、コーリエは驚くべきことを言ってきた。

 あの人達が、少し狂っているとわかっているとは、とても賢い子である。

 本当に、どうしてこのようにきちんと物事を理解できているのだろうか。なんだか、とても気になる。


「二人は、カルニラ様達の影響をあまり受けていないんだね」

「え? あ、はい。そうですね」

「よく偏見に溢れていると思えたね? 何か理由でもあるの?」


 気になったので、私は聞いてみることにした。

 コーリエ達は、どうして母親達の影響を受けなかったのか、その答えを教えてくれないだろうか。


「私達がお母様達の意見を取り入れなかったのは、お兄様の教育のおかげだと思います」

「お兄様……カルード様のこと?」

「そうです。カルードお兄様から色々と教えてもらっていたので、お母様達の言うことを鵜呑みにしたりせず、自分で考えるようにしていたから、影響を受けずに済んだのだと思います」


 二人が真っ直ぐ育ったのは、カルード様のおかげだったらしい。

 どうやら、カルード様は二人に人の言うことを鵜呑みにせず、自分で考えるように教育していたようである。

 そのおかげで、コーリエとケルヴィルは、母親達の悪意に満ち溢れた偏見に気づけたのだろう。それは、私にとっては嬉しいことである。

 同時に、カルード様がカルニラ様達とは違う存在なのだと改めて理解できた。二人に、これだけのことを教えられるのだから、彼自身も私を妾の子だというだけで批判していた訳ではなさそうである。

 だが、それはつまり、私が個人的に低く評価されていたということだ。なんだか、それはそれで悲しくなってくる。


「カルード様は、すごい人なんだね……」

「はい。今回も、私達を一番心配してくれて、一番気にかけてくれていました」

「確かに、そうだよね」


 コーリエの言葉に、私は頷いた。

 確かに、今回の事件でも二人を一番気にかけていたのは、カルード様である。

 無謀なことをした二人を心配し、今後そんなことはしないように説教もした。普通なら、それはカルニラ様辺りの役目であるはずなのだが、カルード様がそうしたのである。

 そう考えていくと、本当に義母や姉が情けない人達であることがわかった。私を罵倒する前に、もっと周りに気をかけておくべきだったのでないだろうか。

 二人が、カルード様の教育をきちんと飲み込み、真っ当な人間になってくれてよかった。私は心からそう思うのだった。

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