第12話 気軽に話して
私の部屋に、ケルヴィル様とコーリエ様が訪ねて来た。
そこで、コーリエ様に気軽に話していいと言われて、私は困惑していた。
私は、二人に丁寧な口調で接している。そうしなければならないと言われているからだ。
本妻のカルニラ様から生まれた二人は、私より上の地位。そのように言われて、今までそういう風な口調で接してきた。そのことは、二人もわかっているはずである。
それなのに、私に気軽に接していいというのは、気を許してくれているということなのだろう。そのことに、私は少し衝撃を受けてしまったのである。
「えっと……気軽に話すというと、気にしないでいいよ。こんな感じかな?」
「はい。そんな感じです」
恐らく、二人は今回の出来事で私のことを見直したのだろう。私がコーリエ様を助けたから、二人はこのように接することを許したのではないだろうか。
そもそも、二人は元々、他の人達に比べれば、そこまで私に敵意を向けてきているという訳ではなかった。
義母から近づくなと言われていたためか近づいては来なかったが、そんなに嫌われているという印象はなかったのである。
それは、二人がまだ幼いため、私がどういう存在なのか完全に理解できないことが関係しているのだろう。義母や姉から嫌われているよくわからない人。二人からは、それくらいに思われていた気がする。
だから、二人は私に気を許す気になってくれたのだろう。姉達なら、こうはならなかったはずだ。
「あ、私達の名前にも様なんてつけなくていいですよ」
「え? あ、うん」
コーリエ様は、さらに様付けしなくていいとまで言ってきた。
本当に、私に気を許してくれているようである。
別に、私としては気軽に話すことに抵抗がある訳ではない。二人は、年下であるため、そんなに気なることではないのだ。
少なくとも、本人達の前では気軽に話していい気がする。二人以外の人がいる時は考えなければいけないが、本人達がいいというなら、それくらいは大丈夫なのではないだろうか。
「コーリエ……これでいいかな?」
「はい、お姉様」
「お姉様……」
そこで、コーリエは私のことをお姉様と呼んできた。
そのことに、私は驚いてしまう。確かに私は姉なので、その呼び方はおかしくはない。
だが、姉として認識してもらっているという事実は、中々嬉しいものである。今まで、私はクーテイン家の人々から家族とは認識してもらっていないと思っていた。しかし、それが今覆ったのである。
こうして、私は初めて妹や弟の存在を実感したのだった。
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