第11話 幼い訪問者達

 色々なことがあったが、私は屋根裏部屋に戻って来ていた。

 とりあえず、フリムド様はカルード様が相手しているはずだ。色々あったので、カルード様もかなり気を遣っているだろう。


「うん?」


 そんなことを思いながらくつろいでいると、部屋の戸を叩く音が聞こえてきた。どうやら、誰か来たようである。

 私の部屋を人が訪ねて来ることは珍しい。食事を使用人が運んでくる時や、何か伝言でもある時以外は誰も訪ねて来ないのである。

 ただ、今は食事の時間ではない。それに、伝言の可能性も低いだろう。私に伝言をするのは、カルード様くらいだ。そのカルード様はフリムド様の相手をしているはずなので、伝言を頼むはずはない。

 ということは、一体誰が来たのだろうか。まったく予想ができない。


「はーい……え?」

「あ、こんにちは……」

「こんにちは」


 私が戸を開けると、そこには幼い男女二人組が立っていた。

 異母弟のケルヴィル様と、異母妹のコーリエ様である。

 二人がこの部屋を訪ねてくるなど、初めてのことだ。そのことには、とても驚いている。

 ただ、何故二人がここに来たかはなんとなくわかった。恐らく、二人はお礼を言いに来たのだろう。


「えっと、私に何か用……ですか?」

「あ、その……」

「先程のお礼が言いたくて、ここに来たのです」


 私の質問に、ケルヴィル様は答えられず、コーリエ様が答えてくれた。

 前々から思っていたことだが、兄であるケルヴィル様より、妹のコーリエ様の方がしっかりしている。子猫を木に登って助けようとしていたのも、コーリエ様なので、度胸も彼女の方があるようだ。


「先程は、私を助けて頂きありがとうございました。おかげで、怪我もなく済みました」

「気にしないでください、私は当然のことをしただけですから。コーリエ様に怪我なくて、何よりです」


 コーリエ様は、私にお礼を言ってきた。

 助けた時とは違い、とてもはきはきとしたお礼だ。

 公爵家であるため、こういう所はきちんとしている。私には嫌なことばかり言ってくるが、一応教育はちゃんとしているようだ。

 いや、本人の人柄もあるかもしれない。コーリエ様のお礼は、取り繕ったものではない心からのお礼だ。そういうお礼が言えるのは、本人が優しい性格だからだろう。

 あの母親や姉達の元で、そのように真っ直ぐに育ったのはすごいことだ。普通は、少しくらい歪んでもおかしくない気がする。


「あ、そんな風にかしこまらないでください。私は妹で、ケルヴィルは弟なのですから、もっと気軽に話してください」

「気軽に?」

「はい」


 そこで、コーリエ様は、私に気軽に話していいと言ってきた。

 その言葉に、私は少し驚いてしまった。このように言われるとは、まったく思っていなかったからだ。

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