第10話 気づいた足元

 フリムド様の言葉に反発した義母と姉だったが、色々と言われた結果、黙ってくれた。

 口うるさい人達が黙ってくれたのは、私にとってはありがたいことである。彼女達からの罵倒を聞かなくて済むからだ。


「フリムド様、度々申し訳ありません。母上には、後できつく言っておきますので、どうかお許しください」

「いえ、僕は何も気にしていません。カルード様、頭を上げてください」


 カルニラ様が黙ってすぐに、カルード様はフリムド様に謝罪した。

 この場で唯一客人の前であることを考えていたカルード様にとって、義母達の行いは許せないものだっただろう。

 先程褒められたこともあって、私はカルード様に少し同情のような感情を抱いていた。少し前の私なら、彼の様を愉快だと思っていたはずだが、今は大分感じ方が変わってきているようだ。


「それでは、中に戻りましょうか。いつまでも、このような場で話す必要はありません」

「そうですね……あ」


 カルード様の言葉を受けて、歩き始めようとしたフリムド様だったが、私を見てその足を止めた。

 何やら、私の足元を見ている。何かあるのだろうか。


「すみません。僕としたことが、このようなことにも気づかないとは……」

「え? なんですか?」

「失礼します」

「は?」


 次の瞬間、私の体は持ち上げられていた。

 フリムド様に、お姫様抱っこされたのだ。

 突然の行動に、私はひどく動揺した。ただ、それにより理解できることもあった。

 そういえば、私は裸足だったのだ。色々あって気づいていなかったが、屋根裏部屋から飛び出した私は靴など履けなかったのである。

 それを気遣って、フリムド様は私を抱っこしてくれたのだ。素足で地面を歩かせないようにしてくれたのである。


「このまま、家の中までお運びします」

「え? あ、ありがとうございます……」


 突然の行動で、よくわからなかったが、私を気遣ってくれたのは確かだろう。そのため、私はとりあえずお礼を言っておいた。

 別に、この運び方以外でも、家の中までは行けるし、なんなら裸足でもまったく構わないのだが、今更それを言う必要があるとも思えない。少し恥ずかしいが、言葉通り家の中まで運んでもらうとしよう。


「む……」

「なんで、あの子が……」


 そんな私のことを、姉達は敵意を向けた目で見てきた。

 ただ、先程の出来事があったので、何も言うことはできないようだ。

 そのことに、私は安心する。これ以上、余計な騒ぎにならずに済むからだ。

 こうして、私は家の中まで運んでもらうのだった。

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