第9話 王子の一言

 カルード様が丸く収めようとしていたが、フリムド様の言葉にカルニラ様達が反応してしまった。

 この人達は、私が魔法学校に入ることが相当許せないようである。

 ただ、このタイミングで色々と言うのはやめた方がいいのではないだろうか。それは、客人であるフリムド様に失礼だからである。

 この場合、カルード様のようにとりあえず肯定しておいた方がいいはずだ。そうすれば、少なくともこの場は丸く収まっただろう。私が魔法学校に入るかどうかなど、後でどうにでもなることだろう。

 尤も、私にとってそれはどうでもいいことである。王族のクーテイン家の評価が下がったところで、私は別に問題ない。


「母上、ここは穏やかに……」

「カルード、私の言うことに反発するとでもいうのですか?」


 カルード様は、カルニラ様を止めようとした。

 だが、その言葉を彼女はまったく聞き入れない。

 それにより、カルード様の表情には明らかに怒りが見えた。ただ、それに暴走している義母は気づいていない。意識が、私を陥れることの方に向いているからだろう。

 ただ、カルード様はこの場で怒りを露わにしたりしないはずである。そのようなことをすることが、フリムド様に対して無礼であるとわかっているだろうからだ。

 なんとかして、カルニラ様を宥めなければならない。カルード様は、かなり悩んでいるだろう。


「カルニラ様、少し話を聞いて頂けますか?」

「え?」


 そこで、フリムド様が言葉を放った。

 その態度は、先程までと同じく飄々としている。仮面を被れる王子にとって、カルニラ様の怒りなど、まったく関係ないようだ。


「あなた達が何を言いたいかはわかりませんが、僕は能力がある者は正しく評価するべきだと考えています」

「その娘に、の、能力など……」

「ならば質問ですが、あなたはあの屋根裏部屋からコーリエ様の体を止められますか?」

「そ、それは……」

「もしそれがあなたにできないというなら、少なくともあなたよりは彼女の能力が素晴らしいということになります。理解できましたか?」


 興奮するカルニラ様に対して、フリムド様は冷静に言葉を放った。

 淡々として告げられる事実に、カルニラ様は何も言えなくなっていた。口うるさい義母が、何も言えなくなってしまったのである。

 もちろん、頼りになる母親が黙ってしまったため、姉達も何も言えない。彼女達には、カルニラ様を黙らせた王子に何か言う勇気などないだろう。

 それらの様子は、私にとっては少し愉快なものだった。いつも嫌なことばかりされていたので、少しスッキリしたのである。

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