伯爵家の次男に生まれ長男のスペアとして冷たく扱われながらも、騎士団で身を立てようとしたダニエル。しかしある日、実家から呼び出され、以前から実家で付き合いのあった伯爵家への婿入りすることを命じられる。
これもある意味立身出世……と思いきやこの結婚には無数の問題が山積みだった。婚約者の令嬢ジーナは、ダニエルの兄と既に関係を持っておりさらに兄の子を妊娠している。しかもジーナはまだ兄に気があってこの結婚に大反対。付き合う前から既に寝取られている……。だったら兄が責任を持てよと思うのだが、兄は兄で荒事の多い向こうの領地へ婿入りを行くのを嫌がっており、かくしてダニエルが犠牲になったのだ。
この時点でかなり最悪なのだが、さらに今回の貴族同士の結婚を他の貴族に、宰相に、さらには王様までもが注目しており、ダニエルは権謀術数渦巻く、貴族同士の権力争いに巻き込まれていく。
借金をして配下を集め、したくもない結婚のために好きでもない婚約者を説得するダニエルの姿はかなり悲惨だ。しかし、悲惨だからこそ読者はつい彼を応援したくなってしまう。それにダニエルだってやられっぱなしなわけではない。親の言うことには逆らえないが、自分を次男だと侮り刃向う者には容赦なく断罪する激しさも持っている。
腕っぷしには自信があれど政治は得意ではないダニエルが、身内ですら信用できない環境でどこまでやっていけるのか? この新米領主の奮闘を是非見守っていきたい。
(「頑張る経営者!」4選/文=柿崎 憲)