第51話 ある教会の在る三人
「フィメル 。おはようございます」
美しい女がそう言った。
彼女はある教会のシスターで、第一聖女だった。
「ん〜?あ゛、おはよー チエリ」
陽気そうな“女”が美しい女——彼女へそう言った。
この“女”は彼女と同じ教会のシスターで、『第二聖女』だった。
「わたくしはチエリでなくチェリッシュですよ。…フィメル、ミハイルの居場所を知っていますか?」
「はぁ〜?知るわけねぇじゃん。アイツの行動なんて全くよめねぇよ」
ふむ…と第一聖女、チェリッシュは考え込む。
そんな彼女を鼻歌を歌いながら食堂へと引きずっていくのは『第二聖女』、フィメル。
その二人を束ねる存在は、今出掛けている。
「どぉせ、礼拝堂でしょぉ」
「いえ、わたくし今お祈りしてきましたが、ミハイルはおりませんでした」
ミハイル、彼こそがこの二人を束ねる存在。
いや、二人ではない。
“ある教会”を統べる者だ。
「はぁぁぁ?チエリ、真面目にそんなことしてんの?」
「当たり前です。貴方もね、ちゃんと見習って——」
はいはい、と軽く受け流す。
第二聖女は、教会を嫌っていた。
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「チェリッシュ様…!フィメル様…!今日こそ私をお導きください…!!!」
「えぇ、勿論ですよ、可哀想な我らの兄妹よ。わたくしたちがきっと、救ってあげますからね……!」
「…チッ、うるせぇの。チエリ、早く終わらせよーぜ」
“兄妹”と呼ぶ信者を中心に、赤い蝋燭が円を描いている。
ひとつひとつに間も残させず、いっそ、一つの円形の蝋燭なのではないかと思わせる程に、美しく並んでいた。
(こんなの、およそ礼拝堂でやることなんかじゃねえよなぁ)
フィメルは思った。
しかし口にはださない。
言ったところで仕置きになるだけだ。
あれはもうやりたくない。
ビリビリも、水に沈められるのも嫌だ。
「さぁ、フィメル。唱えましょう。我らの兄妹が無事に家族の元へ逝けるように」
「…ウン」
(あぁなんて、胸糞悪い救済なのか)
『 May you be saved happily』
禁忌。
その代名詞とも言われる一つを、我々は今犯しているのだ。
なんて甘美で、背徳的で、素晴らしい———。
男は顔を輝かせながら、自分の手を首に回す。
————————————————————
ある丘に、新しく墓が生まれた。
「随分、残酷な救済だよなぁ」
「あら、そんなことないわ。幸せなまま…救われるのですもの」
救い、そう、救済。
我々が掲げる救済は、:s$u.i@ci&:d?e
だから、正しい。
救いだ。
「“love our lord”」
「あら、こんにちは。ミハイル」
「ぁー!やっと来た!遅いよ」
「わたしは1秒たりとも狂っていない。我が主につかえ、敬愛している故、そんなことはあり得ない」
美しい金髪をなびかせ、碧眼の彼がそう言い放った。
“ある教会”の統治者であり、聖人であるこの男は、ミハイル。
「行こう。まだまだ我らの兄妹が救いを求めてこの世を這いずっているのだから」
超優良物件への転生 猫ってかわいいよね! @NEVER926
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