第50話 杖

「これより、記念すべき第一回魔法授業をはじめる。私は魔法を教える––––」


やってきました第一回目の魔法授業☆

この学校、勉強の意欲ありすぎじゃないですか☆

まじで勘弁☆


「––––から、これより諸君らの杖を作ってもらう。魔法は勿論杖なしでも扱えるが、有った方が調整・扱いやすい」


…へー、そうなんだ。

そういえば何年か前、公爵は言葉だけでセスを燃やして(語弊)いたよな。

そう考えると、公爵は結構凄い…?


や、まぁ?当たり前ですけど?

俺もすぐ追いついてやりますけど?


「…では、初日に配られた銀の棒を取り出してくれ。君たちの先輩が与えたものだ」


ん?銀の棒?

双子(暫定)の先輩が配ってくれたやつか?


一拍置いて、クラスメイトたちもゴソゴソとソレを取り出す。

持ち物に指定されていたけれど、これ自体が杖な訳ではないのか。

じゃあ、これをどうするんだ?


「まず、これに諸君らの魔力を流し込んでくれ。そうしたらソレは反応するから」

「あのー、先生…」


先生の言葉に対して、クラスメイトの一人が手を挙げる。


「魔力、と言っても、僕らまだ感じた事少ないんですが…。ほら、法律で…」

「む?あぁ、確かに。失礼した」


正論である。俺すら魔力を感じた事はない。

公爵やケイシー先生がさらっとやっていたが、簡単にできるものなのだろうか。


「…目を閉じて、深呼吸を三回してみろ。その後、心臓を意識すると感じやすくなる」


早速チャレンジする。

いち、に、さん。

そして、心臓に意識を集中させて…。


………。


…………。


おぉ、なんか体がふわふわする。

熱に浮かされてる時みたいな…ん?これは正解なのか?


「体が熱くなってきた者は成功だ。上級生になれば即座に感じることができるようになる。上手い者はそれを使い人間や生物の位置を把握できるようになる」

(ふーん。…目指したろ)


「……先生。我輩全くその症状がでないのだが」

「…シヴァは…。恐らく小物を媒体とせねば魔力がねれぬタイプだな。杖を作れば解決するだろう」


(そっ、そんな!我輩、物語の魔法使いみたいに手から魔力の波動をだしたかったのに!)By アビィ


その後、話は滞りなく進み、ついに杖を作る直前までに至った。


「杖は、己自身だ。己の魔力が形を成す。色、形状、長さ、諸々の特徴をな。故に使用者に馴染みやすい。では、自分の後に続け」


己を示せショウ•ヨアセルフ


「「「『己を示せショウ•ヨアセルフ』」」」









波の音がした。

静かな音だ。

どこかで、“イルカ”の鳴く声がした。


朝日が昇っていた。

どこかで、俺を呼ぶ声がした。








ジワァ、と、形が刻まれていく。

ただの銀塊だったものは、魔力に浸され、使用者を、術者を現していく。


手持ちには、波を思わせる凹凸と、その凹凸に美しいイルカを刻んでいた。

全体としては海の青さだったが、先端につれ赤がひとすじ昇っている。


それが、ルークの杖だった。


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