第49話 久しぶり、

「ご機嫌麗しゅう、ヒメナ嬢」

恭しく頭を下げて、彼女の手にキスをする振りをする。

さすがにダイレクトにする訳にはいかないので。


「…えぇ、ご機嫌よう、ルーク様」

ヒメナも制服の裾をつまんでお辞儀をする。

久しぶりに会った彼女は、昔よりずぅっと綺麗だった。

両サイドに三つ編みを垂らしオールバックなのは変わらないが、まるで––––。


「今日は貴女と団欒したいと思いまして」

「…あら、奇遇ね。私もよ」


微笑み合う。

昔はそんなに身長の差がなかったのに、今では俺の方が少し背が高い。


「えーと、ギル」

「はい、ルーク様」


ギルがヒメナを席に座らせる。

次に俺のことも座らせてくれた。

やー、昔より滑らかな動きだ。

きっと従者なんとか科で習ったんだろうな。


「ありがとう、ギル」

ギルに礼を言い、さぁて本題に入ろうかと身を乗り出す。

が、そこであることに気がついた。


「ヒメナ、最近寝れていないのか?隈が酷いようだけど」

「え?…大丈夫よ!それより?ルークはどうしたの?」


途端ヒメナが笑う。

ものっそい違和感があるのですが。

え?どしたん?なんか怖い夢見てるの?


「や、ほら、最近変わった事ないかなと」

「……特にないわ」


む?そうなの?

俺はヒルト師匠に貰ったネックレスを持ち歩いているけれど、三日に一回殺しにかかってくる。

“頭上から”園芸部の扱ってた鉢が何故か落ちてきたり、

何もないところ、ギル以外居ないのにすっ転んで頭を大理石に打ちそうになったし、

(ぎりぎりギルに掴んでもらって助かった)

眺めが良いなーと思ってたら突風が吹いてきてバルコニーの外に落とされそうになったし、

挙句の果てには学校指定の靴に画鋲が入ってたからな⁈


あ、ちなみに最後のやった奴は公爵家の有能オブザ有能ズの1人、ギルに見つけてもらいました。

うーん、他学年の先輩だったけど、フルボッコにさせてもらいました。

誘拐された時に見た、ケイシー先生とステラのフルボッコ術を真似した結果です。

あれはもう忘れられないよ。


ん?そいつが最終的にはどうなったかって?

見せ物一択!それ以外にあり得ねぇ!

“下”の下着以外引っ剥がして、特殊な縄で腰巻いて時計台に吊ってやりましたわ。



「最近俺は殺されかけてたんでね。ヒメナにも影響が及んでないかと」

「あら。ご愁傷様。生憎だけど、私は商売の事で忙しくて周りの事に目がいってないのよ」


笑われた…。

やっぱネックレスのせいだ!

くそぉ、あの飾りどんな事しても壊れないから面倒なんだよ!

あ、師匠から眠れるようになったという手紙は届いたけど。よかったよかった。


「んー!いいんだよ!…ヒメナはさ、」

「なぁに?ルーク」


………、


「前世のこと、まだ憶えてる?」

「っ、……」


息を呑まれた。

あ、やっぱそうなのか。


「俺はつい3秒前の事のように、記憶を憶えてるんだけど、ヒメナは」

「……最近、記憶が無くなってきてるの」


ヒメナがティーカップを両手で持つ。

その手は震えていた。


「じ、自分が、“前”誰だったのか、忘れかけていて。家族、のことも、あやふやになってきてて」

「ヒメナ、」



「ど、どうしよう、ルーク。私、おかしくないよね?“地球”は、“日本”は存在してたわよね?そ、それが、わかんなくて」


顔が青い。

これ以上はやめといた方がいいかな。


「大丈夫だよ、ヒメナ。俺が証人だ。俺と、ヒメナは“前”があることをちゃんと知ってる。憶えてる。心配するな」

近寄って、肩をさする。

流石に抱きしめることはできないが、少しでも落ち着いてほしいのだ。


(俺と、ヒメナと…『バジル』も、だけど)

ここ数年死神は俺たちの夢には現れてこない。だからヒメナが怖くなるのもわかるが…。無くなっていく、と言うのがなんとも気になるな。


「ヒメナ、寮まで送っていくよ。さ、立って。後日また話そう」

「えぇ…。ごめんなさい、本当に」


大丈夫だ、ヒメナ。

君もきっと、【世界録】を見れば、“前”の事を現実だったと思い出せる。






だから、その為にもいち早く、取り返さなければ。






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《感謝》

この度この小説のPV数が一万を超えました。

本当にありがとうございます。とても嬉しいです。こんな事で喜んでしまいます。

近況ノートにも感謝の言葉を書いたのですが、ここでもお伝えいたします。


いつも応援、この小説を読んでくださりありがとうございます。

少しでも皆様に読んでもらえていると実感すると、とても励みになっています。


更新頻度は遅いですし、内容も薄く、短いですが、大切に書いております。


これからもこの作品を、ルーク達をよろしくお願いします。


by作者












(欲を言うなら他の作品達も見てもらえると…嬉しいカナッ)



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