第14話 ~ 距離間 ~
何故か時折、彼女との間に距離間を感じる。
嫌われる様なこともした覚えはないし、それでいて、あからさまに避けられているわけでもなく、ただ単に、そんな時があり、それは気のせいではないと思う。
彼女とは、特別に親しい間柄ではないが、それでも、互いにほんの僅か見つめ合う時もあるし、何かあった時、彼女はいつも真っ先に対応してくれる。
彼女と偶然に出くわしたときに声をかけようとすると、彼女は自分に気づかないふりをして、声をかける前に何処かへ行ってしまう。その度に、彼女から何か防御線を張られている気がしてならない。
そんな防御線を張られると、何をどうしたらいいのか分からなくなる。
彼女が、どうでもいい人なら、そんなこと、どうでもいい。でも、そうは思えない人だから、何をどうすれば良いのか思考が迷走してしまう。
”避けられているのかな・・・”
そう思うと、有刺鉄線の外から彼女を眺めることしかできず、その先の一歩を踏み出す勇気がない。本当は、もっと近づきたいのに。
このまま静かに外から眺めていれば、いずれ彼女のことを何とも思わなくなっていくのかな。
今はもう彼女のことを一日でも早く忘れたい。
それぞれの恋物語 春藤冰 @360Works
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