第50話 アニメ13話(最終回)『想夫香』



 4日滞在していた長女一家がお帰りになって、(笑)、やっと、長かった私の年末年始の行事が終わった。


 それで作夜のこと。

 

 静かになったリビングのソファーに寝そべり、「さあ、撮りためていたアニメ『後宮の烏』を見るぞ!」と、はりきったのだけど……。


 テレビの録画記録の画面が、なんだか変……。


「な、な、なんと!

 アニメ『後宮の烏』は、12月24日の第13話『想夫香』で最終回とは!」


 理解するのに、お婆ちゃんは時間がしばらくかかってしまったわあ。


「ええ? 7巻もある小説のアニメ化が、たった2巻目で終わるなんて!」




 驚いた、驚いた……。


 でも、アニメ『十二国記』のとんでもない終わり方を過去に経験しているので、事情が飲み込めて、すぐに立ち直ることができたけれど……。


『後宮の烏』のこれからの展開である、後宮を離れての世界観や地理が、小説を読みながら作り上げた自分の想像と合っているのか合っていないのか、画像として見たかったという残念な思いはあったけれど……。




 まあ、若い人向けのアニメなんてそういうものなんだろうなあ。

 なんか、途中でぷつりと、続編の出版を切られてしまうライトノベルの終わり方に似ているような気もするなあ。


 こんなモヤモヤ感が残るものに、この年齢で、わざわざ足を突っ込まなくても、よかったかなあ。


 世の中、もっと完成度も高く、ワクワクする面白いものがあると思えば、ちょっと期待した分、時間を損したような気持になってしまった……。



 たぶん、この諦感は、本場中国が制作した完成度の高いアニメ、『天官賜福』『魔導祖師』『天宝伝説』を観てしまったというのもあるのだろう。





 さて、本題のアニメ13話『想夫香』の感想に戻ります。



 今回は、先代烏妃・麗娘に対する冬官・薛魚泳の想いという、なかなかに印象深いお話でもあるのだけど。


 しかしながら、この薛魚泳の想いは、烏妃という立場がいかに理不尽で孤独に満ちたものであるかという、いくつかある逸話の中の一つ。


 そのために、ことさらこのお話を最終回にもってくるのも残念と思ってしまう。


 その理不尽と孤独から解放されるために、烏妃・柳寿雪は旅に出て知恵と勇気で戦うのが、本来のこの小説のテーマであるからだ。


 そこに立場や身分を超えて絡んでくる多くの人間関係も、読みごたえがあって、小説はおもしろいのだけれど。




 そうそう、皇帝・高峻と手をとりあって向かい合うアニメの最後の映像も、小説を完読した者としては、ちょっと不満が残った。


 烏妃・柳寿雪は高峻に愛されることによって、理不尽と孤独から解放されたように観ているものは思ってしまいそうだから。


 小説『後宮の烏』は、後宮ものの定番である、鈍感娘がなぜかその鈍感ゆえに皇帝に愛されて、妃になる……、というお話ではない。


 思いやりと信頼で協力し合って、お互いの理不尽や孤独と戦う骨太な話だ。

 

 正直に言って、あのアニメの終わり方では、小説の最終回の描写、寿雪と高峻が共白髪になって再会し碁を打つというシーンが、台無しだなあと思ってしまった。


 



……ということで、『後宮の烏』のアニメの感想は、今回で終わります。


 このアニメ放映がきっかけになって、白川紺子さんの小説がもっともっと読まれますように……。



 

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