第48話 アニメ11話『布石』



 アニメ『後宮の烏』11話の『布石』は、小説でいうと、2巻の第4章『想夫香』を分けた前編となります。


 皇帝・高峻と烏妃の絆を深めた囲碁ののどかな光景から始まって、鵲巣宮じゃくそうきゅうで起きているらしい凄惨な事件の幕開けです。


 ちなみに、鵲巣宮じゃくそうきゅうじゃくとは鳥の<かささぎ>のこと。『後宮の烏』では妃嬪たちの住む殿舎にはそれぞれに鳥の名前がついていて、屋根瓦の飾りにその鳥があしらわれている設定となっています。


 実を言うと、この<鵲>という漢字の訓読みがわからないまま小説を読み進めていたので、今回このエッセイを書くために調べました。1つ物知りになって嬉しいです。(笑)




 アニメ『後宮の烏』の11話『布石』では、宵月しょうげつというビジュアル的にはかっこいいがその言動は人を超えている、謎の人物が登場します。


 彼は「この体は器だ」と言います。

 このあたりから『後宮の烏』の物語は、天界の神々が絡んできて複雑になってきます。


 神々にも神々の国での名前がありつかさどる役職名があり、人の世界に降りて来れば器として借りる人の体に名前があり……。そして使い部に鳥部とりべにと、ものすごくややこしい……。


 たとえば、烏妃うひの人としての名前は柳寿雪りゅう・じゅせつですが、後宮では烏妃と呼ばれています。それは体の中に烏漣娘娘うれんにゃんにゃんの半身を宿しているからで、時に彼女はその烏漣娘娘を表に出し、烏漣娘娘となってしまうこともあります。


 また、烏漣娘娘うれんにゃんにゃんという呼び方は人間世界のもので、神々の間では、単純にからすと呼ばれます。そしてまた皇帝が<夏の王>であるのに対して、烏妃は<冬の王>という立場でもあります。烏妃の鳥部とりべは、金色の鶏・星星しんしんです。


 この一人の少女の、烏妃・柳寿雪・烏漣娘娘・烏・冬の王という立場が複雑に絡み合って、全7巻という長い長い物語が展開していきます。


 いろいろな要素が絡んだ烏妃の実体を理解するのに、私は小説を2回読み返さなくてはなりませんでした。


 でも、いまだに、今回の11話から登場する宵月しょうげつを器としたふくろうのいくつもの体と名前が絡む実体を、私は理解できていません。少し後に登場するもうひとりの神様も、またしかり……。


 たぶん、3回目を読まないと無理なようですね。(笑)


 でも、このややこしさとめんどうくささが、小説を読んでその世界観にハマるという快感でもあると思うのです。サクサク読めるというだけが、小説を読む楽しみではないとも、また思っています。




 ところで、アニメ『後宮の烏』をここまで観てきて気づいたことなのですが、アニメの物語の展開は、白川紺子さんの書かれた小説にかなり忠実です。というか、まったく手直しをしていない、そのものの世界です。


 70歳を超えた私はテレビでアニメはめったに観ることはありません。そもそもが、ライトノベルというものの存在すら、カクヨムで知りました。


 あるとき、このカクヨムで小説賞を受賞した作品原作と、書籍化された作品という、ビフォーアフターというのも読み比べてみたことがあります。粗筋も文章もまったく別の作品に変わっていて、ほんとうに驚きました。


 このような変更は、ライトノベルの世界では、原作者と編集者によって当たり前に行われていることであるらしいです……。


 それで、『後宮の烏』も小説からアニメになるにあたってどのように変わるのかと気になっていました。しかしながら、いまのところ小説の通りに物語は展開されています。小説から入った『後宮の烏』のファンとしては、とても嬉しい。


 作家によって初めに書かれた物語が、すべての媒体の頂点として燦然と輝いて欲しいものです。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る