第47話 アニメ10話『仮面の男』



 私事なのですが、1か月前に、ここカクヨムで4年ほどかかりきりだった中華ファンタジー小説を書き上げたところです。そしていまその前日譚となる、新しい中華ファンタジー小説を書き始めたところでもあります。


 そのために、現在、その新しい小説のことで頭が一杯です。


 白川紺子さんの『後宮の烏』を読み返しつつ、中華ファンタジーで使われる語彙を拾って蘊蓄うんちくを垂れるというエッセイのネタを、しばらくは思いつきそうにありません。それで当分の間、アニメ放映を追いながら、その感想を書くことにしました。




 …ということで、今回は、アニメ10話『仮面の男』です。


 ところで、アニメも10話となって、烏妃と皇帝・高峻の関係が友情以上には発展しないということに、そろそろ視聴者も納得された頃ではないだろうかと思うのですが。


 表情をまったく変えない高峻と違って、時々、アニメの中の烏妃は高峻の言動に顔を赤らめたりとまどったりしているように見えますが……。そんな彼女の乙女らしい言動は、高峻への恋愛感情から来るものではありません。きっぱり!



 烏妃はその育った環境から今まで他人と接したことがありませんでした。ましてや若い男性との交流は皆無でした。赤面や戸惑いは、そのことから来る感情です。小説の中でも、この烏妃の揺れ動く心の描写が時々書かれていて、実を言うと「あっ、二人の恋物語が始まる!」って、私も何度もだまされました。


 でもでも、二人の間に恋愛感情はないと偉そうに言い切るには、私も本を2回読まなくちゃなりませんでしたが。


 しかし、そう理解して、諦めてしまうと。

 皇帝の寵愛をめぐっての女たちのドロドロ関係に読者や視聴者の心は乱されることなく、『後宮の烏』の世界観をよりいっそう深く楽しめます。


 小説をすでに完読して、その結末を知ってしまった私としては。

 恋愛感情抜きのストーリー展開は、この『後宮の烏』の世界観に相応しいすごくいい設定だとさえ思えます。


 後宮ものでありながら、恋愛感情を超越して、男女の生涯に渡って長く続く友情がテーマというのも、なかなかにいいものです。しかし、ここで何人もの読者や視聴者が減ったのではないかと、不安ですが……。(笑)




 皇帝・高峻はその育ちと立場とのために、感情というものを滅多に表さない男です。そして、ライトノベルの後宮ものによくある、氷のような冷たい容貌の中に実はヒロインを想う熱い心を隠し持っているというふうにも、残念ながら、物語りは展開していきません。


 烏妃もまた、よくあるライトノベルの設定のように、天然の鈍感力で立ち回っているうちに、自分の気がつかないところで、皇帝の寵愛を得ていたというふうにはなりません。


 それでいて、お互いに力を合わせて難題を解決に導き、共白髪になるまで(烏妃の髪はもともと白いのだけれど)その友情は長く続きます。


 書くのに、かなり難しいテーマです。


 アニメの放映が終わったら、ここカクヨムの中華ファンタジー小説でも、恋愛を超越した『後宮の烏』のような小説が書かれるようになるのでしょうか。そして、中華ファンタジー小説の新しいジャンルの確立となるのでしょうか。

 楽しみです。




 さてさて、今回の幽鬼の楽土送りは、お話的に少しばかりあっさりとしていました。


 しかし、その代わりに、烏妃と皇帝をとりまく人物たちが増えています。増えている彼らのなにげない一挙手一投足に、実はそれぞれ「あっ!」と思ってしまう深い意味が隠されています。そのストーリー展開から目が離せません。


 ここまで書いて、白川紺子さんのストーリーテーラーとしての巧みさに、あらためて惚れ惚れとしてしまいました。



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