第32話 茶を煮だす ≪1≫


 №26 茶を煮だす



 白川紺子さんの『後宮の烏』、第1巻『花笛』155ページより抜粋。



『ご用向きは、花笛の件ですか』

 自ら茶を釜で煮だしながら、花娘は尋ねた。足もとにはやわらかな花氈が敷かれ、間仕切りに綴錦の見事な衝立が使われている。几にかけられた上敷には鶯鴬が刺繍してあった。




『後宮の烏』では、茶を淹れる(茶を煮だす)描写が、第1巻の『翡翠の耳飾り』(51ページ)にもある。この最初の描写は、護衛の宦官・衛青が皇帝・高峻に茶を煮だす(茶を淹れる)というもの。


 こちらの抜粋は控えるけれど、男が男にお茶を煮だす(淹れる)という、なかなかに艶めいたシーンだ。


(茶を淹れると茶を煮だすの違いは、後述します)



 この2つの茶を淹れる場面を読んでより、自作小説の白麗シリーズでもそういう場面を書きたいものだと、ずっと思っていた。それも出来ることなら、男が女に、愛をこめて茶を淹れる場面を……。



 46年間もずっと家の中にいて主婦業をこなしてきて、私は人に茶を淹れたことがあっても、淹れてもらったことはほとんどない。それも相手を男に限定すると、これはまったくもって皆無だ。


 茶を淹れてもらうどころか、70歳になった今でも、家族で外出して自販機で飲み物を買う時も、財布を持った私が皆の好みを訊いてお金を投入して、出てきた飲み物を配ってまわっている。(涙)



 イケメンに愛をこめて茶を淹れてもらうって、どんな感じなのだろう。

 イケメンが私のためにだけと淹れてくれたお茶って、どんな味がするのだろう。


 ああ、夢想してしまうなあ……。(笑)



 ……ということで、先日、やっとその場面を書くことが出来た。


 あさのあつこさんの弥勒シリーズに出てくる遠野屋清之介をモデルにした彩楽堂の主人が、萬姜さんに茶を淹れるシーンだ。

 もちろん、遠野屋清之介はいまの私が一番大好きな男。そして、ちょっと小太りでときおり正義感を爆発させては暴走する萬姜さんは、私の分身。

 

 


 ③ 天界より落ちた少女の髪は真白く、恩寵の衣を纏って、中華大陸をさまよう(再び慶央篇)の『萬姜、茶館に誘われる』

 https://kakuyomu.jp/works/16816927859326305676/episodes/16817139554968618809


 もう、大満足です!(笑)




 ……と、最初から『茶を煮だす』は、主婦業46年間の愚痴と不満の大噴出となってしまいました。

 真面目な考証は次回となります。


 最後に、何度も書くけれど、白川紺子さんの描写、ほんと素敵です。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る