第31話 刺史(長官)



№25 刺史しし(長官)



 白川紺子さんの『後宮の烏』も、第一巻の『花笛』の章に入りました。


 これから少しずつ物語も、後宮を舞台とした皇帝と妃嬪の話から、烏妃とは何者という『後宮の烏』のテーマに移っていきます。物語にも深みがまし、そして語彙の使われ方も、後宮から外の世界へと広がっていくと思われますので、楽しみです。




 ↓いつものように、『後宮の烏』の149ページからの抜粋です。


『欧玄有は三年前、歴という州に刺史(長官)の部下、参軍として赴任した。そこで起こった暴動に巻き込まれて、命を落としたのだ』




 はい、ついに出ました! 

 中華ファンタジー小説を書くものが、もっとも頭を悩ませる大物語彙の登場です!

 州と長官! (笑)


 人名の姓とか忌み名とかあざなとかの関係がどうしても覚えられないのと同じく、私は、州と郡と県と、それからそれぞれのトップの役職名である長官とか太守とか県令というものの関係も、なぜかどうしても覚えられません。(涙)


 数学のサイン・コサイン・タンジェントの部類です!

「ほんと、そんなことを知って、なんになる!」と叫びたいです。


 考える前から脳みそが「いやだ、いやだ」と言っています。

 そこをなんとかなだめつつ、理解できるとことまで纏めてみることにしました。




 まずは、州と郡と県についてです。


 おおまかに言ってしまえば、国の下に州がいくつかあり、州の下に郡がいくつかあり、郡の下に県がいくつかあるという感じになっています。


<郡県制>というものらしいです。


 そして、強固な中央集権国家にするためには、州・郡・県の長はすべて都から派遣する役人であることが好ましいのだとか。


 しかし、地方には豪族がいて、また先祖が朝廷より地をたまわった諸侯などというものがいて、昔からその土地を治めています。そして、それらの豪族や諸侯は代々の世襲制でもあります。


 ここに突然、都から役人が来て「ああしろ、こうしろ」と彼ら(豪族や諸侯)に言ったら、揉め始めるのは、政治に疎い私にでもわかります。


 そのために、完全な<郡県制>は不可能ということで、世襲制の豪族や諸侯も容認する形の<郡国制>となりました。県がなくなっていますね。県は、もともとその土地に居る豪族や諸侯に任せるということでしょうか。




 中華ファンタジー小説を書くものを困らせるのは、この<郡県制>と<郡国制>が、中国の長い歴史とたくさんの国の中でごちゃごちゃに混じってしまったことにあります。


 それで、華流時代劇ドラマを見ていると、地方をもともと住む豪族や諸侯が治めていたり、都から派遣された役人が治めたりと、定まっていません。


 私の脳みそが理解不足というのでもなかったようで、安心しました。(笑)


 そして、ごちゃごちゃしているついでに言うと、この州・郡・県という区別もまた、中国の長い歴史とたくさんの国の中で曖昧になっています。正確に書くというのはお手上げですね。




 さて次に、刺史に太守に県令とは。


 これもまたおおまかに言ってしまえば、州のトップが刺史(長官)、郡のトップが太守、県のトップが県令ではあるのですが。


 もともとの刺史は監察官という立場であったらしいです。時代の流れの中で、いつのまにか州を治める長官となり、またまた監察官に逆戻りしたりと、いろいろ変化しました。

 

 そうそう、ここで取り上げた刺史に太守に県令以外にも、州牧とか知府事や知府とかいう名称もあります。 


 自分の書く中華ファンタジー小説の中で、それぞれにイメージした名称で、適当に誤魔化すしか、もうこうなってしまうと方法はないですね。(笑)

 

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