第25話 南衙の兵 ≪2≫
№19
前回の≪1≫の続きです。
↓白川紺子さんの『後宮の烏』、第1巻の59ページより抜粋。
『ある昼下がり、遊里を管理する教坊使が、南衙の兵をつれてやってきた。妓家の皆が時間をかせいでくれているあいだに、母は幼い寿雪をつれて逃げた』
教坊とはということで、ウィキペディアより抜粋です。
『教坊(きょうぼう)とは、唐以降の中国王朝における宮廷に仕える楽人や妓女たちに宮廷音楽を教習させるための機関をさす。 楽曲や歌舞の習得を主な目的とするが、官妓にあたる妓女を統括する役割もあった。 その後の王朝に引き継がれ、清代まで続いたが、雍正帝の時に廃止された』
『後宮の烏』から抜粋した文章には、「遊里を管理する教坊使」とあるので、宮廷音楽を教習させるための機関というよりは、遊里を管轄する役所という感じなのでしょうか。日本の時代劇小説でいうと、花街におかれていた<検番>みたいなものを想像すればよいのでしょうか。
ちなみに役所といえば、『後宮の烏』のもう少し前のページには、『太府寺は市場を管理する役所だ』という文章が出てきます。
話の逸れついでに書くと、唐の時代に犯罪の捜査にあたった役所は、大理寺。
『王朝の陰謀・判事ディー・シリーズ』という唐の時代を舞台にした面白い映画があります。女帝・則天武后の命を受けて、ディー・レンチェという判事が、難事件を捜査して解決するというお話です。
大理寺というように寺という言葉がつくので、「ディー・レンチェはどこのお寺の僧侶なのだろうか? それにしては、お坊さんらしからぬ恰好をしている」と、ずっと疑問に思いながら観ていたのを思い出しました。太府寺・大理寺と寺という字が使われていますが、それぞれにお役所なのですね。
ところで、この「判事ディー・シリーズ」は、唐の時代の絢爛たる華やかさを知るのには、参考になる映画です。そしてまた、戦闘ものでも宮中恋愛ものでもなく、奇想天外な犯罪捜査ミステリーということで、毛色の違った中華ファンタジー小説を書く参考にもなるのではないでしょうか。
そうそう、シリーズ①の『人体発火怪奇事件』はアンディ・ラウ、シリーズ②の『天空のドラゴン』はルオ・イークンの主演でした。頭のきれるイケメンを書く参考にもなりますよ。
ところで、『ある昼下がり、遊里を管理する教坊使が、南衙の兵をつれてやってきた。妓家の皆が時間をかせいでくれているあいだに、母は幼い寿雪をつれて逃げた』という、白川紺子さんの文章。
このエッセイに書く前に読んだ時から、気になっていた文章です。
日本の遊郭を、中国では妓楼ということは知っていました。それで、自作中華ファンタジー小説では、妓楼という言葉だけを連発していたのですが。それもあって、白川紺子さんのこの文章を読んだ時、「遊里か……。妓家か……」と考え込んでしまったのです。
女が芸を見せたり夜伽の相手をする場所には、くるわ・遊郭・遊里・花街・娼窟・淫売宿……と、いろいろな名前がついています。娼窟・淫売宿となると、小汚さあふれる底辺という感じですね。
中華ファンタジー小説であっても、その物語の時々の雰囲気で、いろいろな名称を使い分けると、雰囲気に深みが出るに違いありません。
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