第23話 囲碁


 №18 囲碁いご



 白川紺子さんの『後宮の烏』には、囲碁に関係する文がよく出てきます。確か、ストーリーも進むと、皇帝・高峻の勧めで烏妃も囲碁を習うようになっています。



 ↓に2つ書き並べた文章は、『後宮の烏』第1巻の49ページと54ページに書かれていたものです。囲碁というゲームを暗喩として使っています。


①『権力の奪取だっしゅは、たった一石で成るものではない。碁石をひとつずつ奪っていくように、高峻は着実かつ堅実に以降の朝廷で力を得ていった』


②『一石、一石、少しずつ彼女の石を奪っていって、追いつめて、逃げ道をふさぐ。高峻が皇太后を幽閉して以来、やってきたのは、そういうことだ』



 私も囲碁が少しばかり打てるので、白川紺子さんもたしなまれるのかと嬉しくなったのですが……。


 しかしながら、囲碁は石取りゲームではありません。


 『互いに黒と白の石を持って、交互に碁盤の目の上に石を置き合う』『打った石自体が取られる形になる場所に、石を置くことは出来ない』という、たった2つの単純なルールを使っての、碁盤上での陣取りゲームです。


 もちろん囲んで取った石は、最終的に地の目を数える時に、相手の地に置いて目を減らすという利点はあります。


 ↑の白川紺子さんの2つの文章を、書き直すのであれば……。


①『権力の奪取だっしゅは、たった一石で成るものではない。碁盤上の相手の目をひとつずつ潰していくように、高峻は着実かつ堅実に以降の朝廷で力を得ていった』


②『一目、一目、少しずつ彼女が碁石で囲んだ地の目を奪っていって、追いつめて、逃げ道をふさぐ。高峻が皇太后を幽閉して以来、やってきたのは、そういうことだ』


 まあ、私も、囲碁を習おうと思った直前まで、囲碁は石取りゲームだと思い込んでいたから、偉そうなことは言えないのですけれど。




 ところで、私が囲碁を習い始めたのは、50代も半ばになってから。


 碁会所の戸をバンと開けて、「囲碁を教えてください!」と叫んだら、碁を打っていた70~80歳くらいのお爺ちゃんたちが、まるで宇宙人を見るような目で、私を見ました。(笑)


 それから、孫がうまれたり家族に病人が出たりで何度も中断して、いまや、私も70歳。私に碁を教えてくださったお爺ちゃんたちもほとんど亡くなられて、碁会所も解散しました。


 今では碁を打つ機会もなく、テレビの囲碁放送を見て画面を指さしながら、「一力さんは、次はここに打つよ!」なんてことをして、楽しんでいます。


 そうそう、死んだ父が大好きだった名誉天元・林海峰さんが我が町で開かれた囲碁大会に来られた時のこと。天国の父への土産話にと出席してみました。


 その時、プロの女流棋士による公開対局というのがあって、途中で、「次は、どこへ打つか?」というクイズが林海峰さんより出されて……。そこに打つのが勝敗的に正しいというのではなくて、そのプロの女流棋士だとどこへ打つか?という感じのクイズです。


 私、その女流棋士だったら、絶対にここに打つって思いました。だって、その場所が、モニターの盤上で金色に光って見えたのです。(笑)


 400人くらいの中で、正解者は私を含めて3人。3人とも女性でしたね。

 林海峰さん直筆の色紙を手渡しで戴いたのが、よい思い出です。あの世で、父も、「よくやった!」と言ってくれたに違いありません。


 そうそう、自作中華ファンタジー小説『白麗シリーズ』の番外編『銀狼山脈に抱(いだ)かれて、少女と少年はアサシンとして出逢った』で、男2人に、お互いの腹を探り合いながら碁を打ちあうシーンを書いてみました。


 もちろん、これも『後宮の烏』のパクリではなくて……、オマージュです!(笑)

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