第20話 禁軍



 №16 禁軍きんぐん



 白川紺子さんの『後宮の烏』では、皇帝の高峻は、北衙ほくが禁軍きんぐんと力を合わせて、後宮を牛耳っていた皇太后・官吏・宦官を倒しました。


 禁軍とは、天子の住む宮城を守る軍隊のこと。


  禁裏,禁中を護衛する軍隊であったことから禁軍と呼ばれます。

 日本だと、天皇と皇居を守る近衛このえ兵とか近衛このえ隊ですね。

 余談ですが、私のおじさんは、第二次世界大戦の時、近衛兵として宮中を守っていたとか。小さな村では誉れの人でした。


 古代中国において禁軍はいつの時代のどこの王朝にもおかれていたようですが、ウィキペディアによると、『後宮の烏』で使われている北衙禁軍ほくがきんぐんという表現は、唐の時代のもののようです。


 ……ということは、『後宮の烏』の時代は、烏妃の衣装といい、やはり唐がモデルのようです。しかし、『後宮の烏』の後編は、世界の成り立ちと神々の戦いへと話は移っていきますので、宮中の決まり事や生活習慣が唐ふうであるということでしょう。




 北衙禁軍のという難しい漢字は、役所とかが集まったという意味があるそうです。宮中は都の北の方向、そして後宮も宮中内の北にあったので、北衙禁軍となるのでしょうか。


 なおウィキペディアによると、唐時代の北衙禁軍は、左右羽林軍・左右龍武軍・左右神武軍・左右神策軍で構成されていたとか。


 羽林軍・龍武軍・神武軍・神策軍……。


 ほれぼれとするかっこいい呼び名です。

 こういう字づらのかっこよさが、中華ファンタジーが書き手をそして読者を魅了してやまないのでしょう。


 そういえば華流時代劇ドラマ『琅琊榜ろうやぼう』1&2での禁軍の名前は、長林軍でした。そして『琅琊榜』の1では主人公・梅長蘇ばいちょうそと仲の良い・蒙摯もうしは、禁軍の将軍でした。


 あっ、蒙という姓は、秦の将軍にあります。


 実をいうと自作小説『白麗シリーズ』に登場する禁軍とそれを率いる将軍・承宇項は、この『琅琊榜』に登場する禁軍と蒙摯将軍のイメージをもらって書いています。


 なお、『琅琊榜』も時代設定は架空なのですが、南北朝時代あたりをモデルにしているとのことです。


 中華統一を成し遂げた秦があっというまに滅んで、劉邦が前漢を興し後漢を経て、あの有名な三国志時代。そして曹操の魏となり、それからたくさんの王朝が並立して、再び隋が中華を統一します。

 南北朝時代とは、このたくさんの王朝が並立していた時代のことです。


 なんか、ついでっていう感じで、中国史の勉強までしてしまいました。(笑)




 ところで、古代中国においての軍隊って、どういう感じだったのでしょう。


 というのも、華流時代劇ドラマを見ていると、将軍職は世襲制のようでもあり、また皇帝の〇〇軍を与って戦争に赴くというシーンもあったりで、そこの区別がよくわからないのです。


 そして宮城谷昌光さんの古代中国ものの小説を読んでいると、国の大臣たちや豪族たちは、それぞれにかなり大規模な私兵を抱えてもいたようです。


 将軍職が世襲制であったり、皇帝とか王でなくとも個人で軍隊を持つとか、このあたりのことが、現代に生きる私にはよくわかりません。


 それから、徴兵もあります。

 古代中国では、若い男だと徴兵と労役はつきものでしょう。

 

 でも、この徴兵と労役を入れると、中華ファンタジー小説においては、物語は前にむいて進みません。まあ、ファンタジー小説なので、その物語の中で齟齬が生じない限り、書くほうも読むほうも、そこには目を瞑るしかないですね。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る