第18話 九九(女性の名前)


№14 九九じうじう(女性の名前)



 九九じうじうとは、白川紺子さんの『後宮の烏』に出てくる、烏妃の侍女の名前です。


 烏妃は自分の秘密が漏れることを怖れて、皇帝の妃という立場でありながら、官婢の老女一人に雑用を任せ、傍らに侍女を置くことなくひっそりと暮らしていました。

 しかし、皇帝・高峻との交流が生まれため、初めて九九という侍女を持つことになります。九九は元気で世話焼きでお喋りな少女という設定です。


 私は架空の人の名前や地名を思いつくのが苦手で、小説を書く時、いつも苦労しています。○○や△△などの記号で下書きして、掲載ぎりぎりとなって、漢和辞典をめっくた偶然に出てくるページの漢字をつかうという方法で決めることもあります。


 それでも決まらない時は、その時に見ている華流時代劇ドラマのエンドロールに出てくる製作スタッフの名前をいただいたりもします。(笑)



 ところで、九九じうじうとは変わった名前だなと思って検索しましたら、数字を重ねた名前は、昔の中国ではよくあるとのことです。生まれた順番につけるのだとか。太郎・次郎・三郎みたいなもののようですね。


 九九じうじうだから、9番目の子どもなのでしょうか。


 でも、よくあるにしては、中華小説ではあまり見ない名前だなと思い、よくよく眺めてみました。


 そしてふと,、別のことに気がつきました!


 皇帝の高峻のルビは<こうしゅん>、烏妃の雪寿のルビは<せつじゅ>です。しかし九九は、<きゅうきゅう>ではない。中国語読みの<じうじう>。確かに、<じうじう>は可愛いけれど、<きゅうきゅう>はちょっと変ですね。


 そうそう、『後宮の烏』には、星星という名の金鶏も登場しますが。こちらも読みかたは<せいせい>ではなくて、中国語の発音で<しんしん>です。


 なんとなんと、『後宮の烏』に出てくる人名の読み方は、日本語読みと中国読みのミックスとなっているのですよ。漢字が重なるとなぜか中国語読みになるのは、歴代のパンダの名前みたいでもあるのですが。




 いま、中国TVドラマでも映画でもそしてカクヨムの中華ライトノベルでも、人名を中国語読みにしているものが増えてきています。

 日本語読みにするか中国語読みにするかの、過渡期なのでしょう。


 それにしても、これはかなり難しい問題です。


 いずれは中国ドラマや小説に登場する人物名は、欧米の人名と同じくカタカナ表記になるのでしょうが……。あまりに早急にやってしまうと、中華ドラマや小説から視聴者や読者が離れてしまう危険性があります。


 中国語読みの人名は、馴染みが薄く、なかなか覚えられません。


 日本語の音読みと中国語読みをうまくミックスした『後宮の烏』は、なるほどと感心しました。





 ところで、中国・女性・名前という語彙で検索していましたら、「中国系小説で使える可愛い女の子の名前」とか「かっこいい男の名前」というサイトが見つかりました。


「あらま、そんな便利なサイトがあるのだわ!」と驚いたのですが、もっと調べていますと、中華ファンタジー小説を書くためとか、中世ヨーロッパ小説を書くためのとかと銘打った、参考書籍まで出版されているではありませんか!


 そういえば以前どこかで、タグをいくつか入れればAIが自動で小説を書くというサイトを見つけたことがあります。試してみたらけっこうまともな文章で、これもまた驚きでした。


 たかが中華ファンタジーされど中華ファンタジー、時代の流れとともに内容もですが、その表現方法もまた少しずつ変化させているのは、興味深いところです。

 


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