2022年

第8話 衫襦・裙・披帛 ≪2≫


№6 衫襦ひとえくん披帛ひはく



 衣装の話は続きます。

 どうやら私って、ファッションが好きなようです。(笑)


 このエッセイとは別のエッセイ、『私、中華ファンタジー小説をまじめに勉強します!』でも、衣装のことについて思うところをいろいろと書いています。華流時代劇ドラマを観ていると、原作や脚本を書いた人よりも、衣装製作にたずさわった人たちのことをあれこれ想像して憧れます。


 生まれ変わって別の人生が送れるのだったら、舞台衣装の製作とか、フランスのパリのオートクチュールの製作などの仕事をしてみたいなあ。きれいな布や糸に、一日中、触れていたい……。




 話がそれてしまいました。


 前回にも書いたことですが、華流時代劇ドラマを観ていて、古代中国の女性の衣装のおおまかな流れというものがわかりました。


 春秋戦国時代から漢の時代にかけては、衿を打ち合わせて着る日本の和服のような上着の下に、ロングスカートを穿いています。


 たぶん、男性(高貴な身分か、あるいは金持ち)もロングスカートみたいです。ズボンをはくのは、軍人と庶民のようです。そしてきっと、貧しい庶民の上着の下は、女性は腰巻で男性は褌だけのような。


 そうそう、どうやら、重ねた上着の丈と袖のたもとの長さで、着物の格というか豪華さが出るようです。それにしてもあそこまで丈も袂も引きずるような長々しいのを着たら、一人ではトイレには行けないだろうと想像するのだけど。


 介助が必要だったのではないかしら。

 身分差別の厳しい時代では、奴婢ぬひなど人ではない感覚であっただろうから、トイレの介助に、高貴な人々は羞恥心など感じなかったのではと想像するのだけど。


 トイレに行くたびに、いちいち脱いで用を足していたのかしら。

 古代中国の大金持ちで、トイレで用を足したあと着物を着替えて、その着物は全部惜しげもなく捨てたという逸話があります。

 

 古代中国の金持ちが、若い女の奴婢を裸にして四つん這いにさせて、人間机だと言ってみたり。また、若い女の奴婢を裸にして並べて、人間屏風だと言ってみたり。現代では想像できない貧富と身分の格差です。


 中国の衣装で帯は細く、体にぴったりと巻きつけています。日本の和服の帯のように幅広く、そして背中で飾り結びはしていません。


 その代わり、帯に飾り物をぶら下げていました。


 白川紺子さんの『後宮の烏』でも、木彫りが趣味の帝・高峻が魚だったか鳥だったかの飾りを彫って紐をつけたものを、「帯に下げるといい」と言って、烏妃にプレゼントする描写がありました。


 でも、烏妃が着ているワンピースのように広がったロングスカートに帯はしないと思うので、あの帯飾りはどうやって使うのだろうと、いまだに謎です。(笑)


 烏妃の着ている衣装は柔らかくて透け感があって、適当に肌も見えて、とても美しい。それで、時代不明の華流時代劇ファンタジードラマの中では、ほとんどの女性たちがいまはこういう感じの衣装を着ています。


 しかしながら、私の書く中華ファンタジー『白麗シリーズ』では、古代中国初期の形の衣装を採用しました。男も女も打ち合わせの上着を重ねて、下はスカートかズボンです。


 なぜなら、私の書く中華ファンタジー『白麗シリーズ』では、萬姜や嬉児のような庶民のおばさんや子どもが、そして市井で汗水たらして働いて家族を養う男たちが登場するからです。


 働き者のおばさんや活発に遊ぶ子どもに、ふわふわと柔らかく透けている衣装を着せることは出来ません。『後宮の烏』の烏妃が着る衣装は、若く美しい宮女や富豪の妻や娘たちが着ていたのではと想像します。



 最後に、衫襦ひとえくん披帛ひはくとルビを振りましたが。


 小説の中だと、衫襦は<うすもの>あるいは<はおりもの>、裙は<スカート>、披帛は<ストール>とルビを振ると、中華の雰囲気を壊すことなく、読者の読解を助けるのではないかと思います。


 

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