インプロビゼーション
阿井上夫
白色レグホン
教室で前の席に座っている彼女のノートにそう走り書きされているのを見た時、私は少しだけ「どきっ」とした。
なんとなく新人漫才師の芸名のような語感。
これが「白色レグフォン」だったら新しいファッションアイテムのような最先端な感じになるし、「白色レグフォーン」だったらゲームのボスキャラのようで格好がいいのに、ちょっと惜しい。「青色ダイオード」並みに強そうだ。
でも、この少しだけ物足りない感じが彼女によく似合っている。
誰もが振り返る絶世の美少女というわけではないがバランスが取れた容姿は、確かにレグホンの「ホン」といった感じだし、素直な性格はまさしく「白色」だと思う。
それでも、言いたいことはちゃんと言う強さには「レグ」が似合っている。
その日の午後ずっと、私は風に少しだけ揺れている彼女の黒髪を見つめながら、そこに「白色レグホン」という文字が右から左に流れていくのを想像して楽しんだ。
*
その後、スマホで実物を目の当たりにして絶望した。
世の中、知らないほうが良いこともある。
( 終わり )
インプロビゼーション 阿井上夫 @Aiueo
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