3LDK、南向き、駅から徒歩15分、近くにコンビニあり
澪凪
初めから分かってた
僕たちはそれぞれ違うところで生まれ育った
大人になり、同じ気持ちを抱いて集まった
最初は戸惑いを隠さずにいた
でも今では、3人で家事の役割分担をし、誰が誰の下着を見ても、何も言わないくらいに慣れていた
そこに、恋愛感情は一つもなかった
というよりも、恋愛感情を抱くほど稼いでもいないし、時間もない
男2人と女1人でルームシェアを始める時
不動産屋に何度も確認をされた
「どういうご関係ですか?」
普通の友達であることの証明は、難しく
かなり時間を要した
最初は、なぎさが家を仕切り、女王のようだった
途中で男2人が結束し、3人のパワーバランスは平等になった
「ねぇ〜ちょっと〜!このパンツどっちの!?よれてるからそろそろ新しいの買いな〜???」
母親より母親のような発言に、僕たちは笑いが止まらない
「どうすんの?私が見る分にはどうでもいいけど、あんた達有事があったら恥ずかしくないの?」
膝詰めで説教されている
こんなことでも幸せを感じるほど、3人は心地よかった
ある日、なぎさから連絡があった
「ごめん、遅くなる。」
いつもなら、グループラインで
「野郎ども、遅くなるから迎えに来い。飯は準備する!!ラーメンにトッピングと小ごはん可能!」
などというものが届くのに
おかしすぎると思い、なぎさを迎えに行くと
そこには見たことのない笑顔をしたなぎさと、同居人であるこうすけが2人で立っていた
僕は声をかけられずにいた
「そっか…」
誰にも聞こえないような声で呟き、その場を離れた
家に戻り、普段通りにできるように、シャワーを済ませ、ビールを飲んでいた
「ただいま〜!!こうすけも一緒!!」
「うぃ〜〜!しょうた、もう風呂入った?」
2人とも顔が赤く、それだけで何かあったのだ、と伝わるほどだった
最初に決めたたった一つのルール
「3人の中で恋愛はしない!」
ルール違反じゃないか!!と心の中で叫んでいるが、きっと、2人は忘れているだろう
もうそろそろ、この部屋もおしまいかな…と心の中で区切りをつけ、残りのビールを呷った
俺もこうすけもなぎさのことが好きだったのだ
どちらが先に、とかではない
なぎさがこうすけを選んだ、というだけである
「早く幸せになれよな…」
小さく呟き、寝落ちした
起きたら、いつも通りの日常が待っていた
110円のスティックパンに牛乳のなぎさ
フルグラとヨーグルトにベーコンエッグのこうすけ
目玉焼きとほうれん草のお浸しとおにぎりの俺
保育士を目指していたなぎさの掛け声でご飯が始まる
「おててぱっちん!みんなでいっしょに…??」
「「「いただきます!!!」」」
2人が話してくれるまでは
この幸せをこちらからは壊さない
2人とも、幸せになれよ
俺も幸せになるからな
たばこの煙に想いを乗せて
3LDK、南向き、駅から徒歩15分、近くにコンビニあり 澪凪 @rena-0410
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
腎臓、1個いくら?/澪凪
★30 エッセイ・ノンフィクション 完結済 144話
禍々しい渦は棘に絡み合って/澪凪
★5 エッセイ・ノンフィクション 連載中 11話
三角関数と君/澪凪
★2 エッセイ・ノンフィクション 連載中 13話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます