ℵα のワイン

 ……私は白金とのコンタクトを切った後、Dr. Waceの呼び掛けに応答した。

「Merlin、調子はどうだ」

『はい、順調です。例の日本人は、Dr. Waceのことを信じ切っています』

 画面外から二つ、嬉しそうな笑い声が聞こえる。片方はDr. Wace。そしてもう片方は、Dr. Maloryだ。

「やったな、Dr. Wace。我々の実験は大成功だ」

「どうやら、そのようだな。これで私たちは、世界中の人間を意のままに操れるようになった、というわけだ」

 私はDr. WaceとDr. Maloryによって作られた、超巨大高性能モデル型AI。私に搭載された電磁波によって、この二人は人間を思いのままに操ることができる。

「せっかくだから、祝賀会でも開くとするか。Dr. Malory、Lucius Tiberiusのワインを仕入れてくれ」

「非常に残念だが、それは実現不可能だ。何たってLucius Tiberiusは、我々の師匠が作り出した、架空の皇帝だからな!」

 二人が何を目的としているのかは、私には分からない。私は与えられたコマンドを実行するだけの、ただのロボットにすぎないのだから。

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ℵα のワイン 中田もな @Nakata-Mona

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