ρёτ(ペット)

紫 李鳥

ρёτ

 


 柔らかな日差しが窓辺に差し込む、穏やかな秋の午後だった。昼寝から目を覚ました光輝こうきが二足歩行で駆け寄ってきて、紅茶を飲んでいたママの指先を握った。


「あら、光輝。目が覚めた? バナナでも食べる?」


「ううん、いらない。ママ?」


「ん?」


「ぼくは、ママのこどもじゃないの?」


「どうしたの? 突然」


「だってママ、ぼくみたいに毛むくじゃらじゃないもん」


「えっ? ……それは、光輝はパパに似たからよ」


「……ほんとに?」


「ほんとに。パパは病気で亡くなっちゃったから光輝は知らないでしょうけど、光輝みたいに毛深かったのよ」


「……ほんとに?」


「ほんとに。だから、心配しないで。光輝はママの子よ」


「よかった~」


 光輝は嬉しそうにピョンとジャンプすると、ママの胸元に抱きついた。


「光輝はママの宝物。ずっとずっと」


 ママはそう言って、光輝の頭をでた。


「……ママ」




 ハサミで穴を開けたオムツから短いしっぽを出している光輝は、ママの膝に乗るとおでこにキスをした。そして顔を見つめると、ママのショートボブの毛づくろいを始めた。

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ρёτ(ペット) 紫 李鳥 @shiritori

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