第59話決戦の時2

_____戦争が始まったのはそれからすぐの事だった。相手の指定した場所で律儀に戦いを始めてくれるか疑問だったが斥候までよこして来た。・・・恐らく問題ないだろう。


指定してきた場所を魔術師に依頼し、使い魔で確認すると魔獣やゴーレムまで配置されていた。


ギルガメッシュ王の見立てでは勝利の割合は4:6。


相手側の戦力はこちらより数も質も上だ。


ただ、


「こちらも奥の手はある。来るがいい、落ちた天使どもよ」














「うおおおおお!」


槍を携えて駆ける兵士達、彼らは死ぬことを受け入れている。


槍でけん制し後衛の弓兵が敵を仕留めていく。


兵士一人ひとりが死ぬ覚悟で少しでも数を減らし、後衛を少しでも前進させる。


「バリスタ、用意!神の矢はまだ使用はできない!突撃!」


先に進めば進むほど兵士は消耗していく。


しかしこれは勝つための突撃ではなく魔王を倒すまでの時間稼ぎだ。


だからこそ、全体の兵力の7割はここに集中させている。


ゴーレムに魔獣など厄介な敵ばかりだ。


敵の後衛にはダークエルフも控えている。


「ギルガメッシュ王・・・!私たちの王・・・・!」


兵士たちは王の名を呼びながら戦場を駆けた。


_____戦争に勝つことを信じて。












いま真っ向から敵兵にぶつけている兵士達は時間稼ぎだ。


本命は数人の選抜されたメンバーで魔王城に乗り込むことになっている。アレスやカイン、アイカ、エリスなど強者揃いだ。


厳しい土地を大きく迂回し城に潜入する。


もちろん道は整備されていない。


罠もあるかもしれない。


「緊張しているのかな?コバヤシ」


「ああ。そうだな」


ブローは珍しく真面目にきいてくる。


当たり前だ。


「大丈夫!今回は万全だよ!頼りになる冒険者もいっぱいいるし!」


ニイナは鼓舞するように口に出す。


馬車がガタガタと悪路を進んでいくと待ち受けていたかのように潜んでいたダークエルフ達が現れた。


暗い木の陰に隠れて待機していたようだ。


「いくぞ!」


こちらもすぐに飛び出せるように非常時に備えていた。パニックになるメンバーはいなかった。


「お先に!」


アレスが真っ先に飛び出すとそれに続いて他のメンバーも続く。


乱戦になったのだが、前回と違ってコバヤシも備えは出来ていた。


・・・今回は問題ない。


多人数での戦いも今回は弁えている。














敵を蹴散らしながら冒険者一行は進んでいく。


もう馬には頼れない。


悪路が過ぎるからだ。


しかし目的地まであと少し。


「もうひと頑張りですね」


キャスターであるエリスは過酷な道には慣れていない。


だが、「引き返すこともいまさらできませんね」と皮肉を漏らした。


「わっ!エリスさんこれ!」


スラ子はニナから貰った携帯食を渡した。


あのクッキーみたいなやつか。


・・・!エリスが口にした時、「おいしい・・・!」と思わず口にしてしまう。


「ふふん!美味しいでしょ!」


「ニナさん・・・でしたっけ。エルフ族の携帯食料は初めて食べましたが、美味しくて驚きました」


ニナは褒められると、「当然じゃない!」と言う。


・・・これはニナが不死であることと俺たちよりかなり年上であることは言わないほうが良さそうだ。


驚かれるのもニナにとって迷惑だろうしな。














目的の城まであと少し、しかし夜まで歩き続けるのは無理がたたる。


冒険者一行は野営をすることにした。


ここまで大人数の野営はしたことがない。


「正直疲れた」


「じゃあ先に寝て後で番をすればいいんじゃない?人数はあるし油断しなければ大丈夫でしょ」


アリスにそういわれたので少し仮眠をとることにした。


パチパチと火が跳ねる音がする。


俺はゆっくりと意識を手放した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ウェポンサモナーとスラ子の冒険2 どれいく @dorei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る