第20話 黒白の旗印はためかず……
有象無蔵はせっかく豪邸を改築して造った山城を有効利用する為に「籠城戦」を集まった将帥たちに提案した。水や食糧については横浜市水道局の三保・恩田・仏向の配水池からの安定供給と『JAみどり』の若手有志による命懸けの搬入(この合戦で死者は事故以外には出ないのだが)を頂くということで話しがついており、たとえ大軍師・諸葛理事長が、『水責め(この場合は備中高松城の水責めとは意味合いが全く違い、鳥取城の飢え責めを命ずるというのか)
何にしても純沙軍は総大将・各部将から兵卒に至るまで全員のDNAが諸葛純沙と同じ、いやいやみんなクローンパーソンらしいからまるっきり同じで、あの世界的ヒットスペースオペラ・ムービー『“スター・ウォーズ”シリーズに出て来る白い奴らども』でなはなくはなく『ストーム・トルーパー風』でありクールビューティーこと諸葛理事長とて、所詮はぺこりの家臣かつ最高重臣という名の宮仕えだから卑怯な手を使う可能性は最初から純沙のまった奇手を好んで使う者なので有象サイドでは予測がつかないのだ。
それよりも『ストーム・トルーパー軍団』は先ほども書いたが、明らか『ディズニー・ピクチャーズ』や『ルーカス・フィルム』のパックリさんであり『ディズニー・ピクチャーズ』から内容証明付きの詰問書とか著作権侵害の警告書、または米国の民事訴訟法にあたる法律に基づく損害賠償請求書などが届きそうな気もするのだが。ああっ、確かあそこの関連ロケーション開発部門の『ディズニー・ピクチャーズ Jr.』を名乗る映画会社に以前『三代目勉強家』が、かなり酷い迷惑を受けたはずだから、おそらくは相互罪状相殺で地球資本主義規模で有耶無耶にしてしまう腹なのであろう。はあー、誰がですって? 当然、アダム・スミスが言うところの「見えざる手を持つ神」つまりは作者自身。そう、わたしじゃなくっておいらだよ!
当然、そういう裏交渉くらいは横着な蝦夷羆=よろよしくま・ぺこりも純沙を遠慮なく手助けするであろう。弘中弁護士あたりをリーダーにした弁護団を作ってね。
そういえば、ぺこりに純沙がアドバイスを速攻で求めた事を覚えおられるだろうか? その質問は、
「あたしの軍が負けた時はどうすればいいのですか?」
というものであった。
それに対してぺこりは、
「守るべき事柄は一つ。どんなにひどい仕打ちを受けたり世間に醜態を晒すような大敗を喫しても絶対に自死してはならないということだよ。純沙にこんな『お
お喋りが過ぎて喉が渇いたぺこりは冷めた茶を啜った。
「それで、あたしはなにに注意すればいいのですか?」
純沙とて、ぺこりの本性が怖いと知っているら遠慮がちに言ったが、内心イラついていた。純沙は実のところ、ぺこりの直臣ではない。本当は現在大人気で実力も一番と噂される噺家・萬願亭洒落が高等遊民だった頃に時空のズレで出会い、二人で超古代帝国を築き、恋仲だったのが時空のズレの反作用で揺れ戻しをしたために遠い世界(住まいは電車で二十分、車なら十分もあれば着いちゃうのだが、大人の事情で『住む世界が別々』になったのである)。
「うん。あまり面と向かって言いたくはないがね、純沙は超美人。しかも今回は、その超美人が三十万人と訊いたよ。 だけど、いくらクローン中にはDNAのコピー&ペーストの時に当然の如く起きる、ミスによって『うっかり純沙』や『おバカ純沙』なんてものから最悪の場合『淫乱純沙』なんてのが現れて有象方に卑猥な性的挑発を掛けることも可能性ではあるだろう。相手も素人だから『戦さで美人を捕まえたら好き放題、犯していい!』なんて考えの野盗上がりの愚か者がたくさんいるという事は過去の事象で純沙だってわかって居るだろう? 日本人は一人一人は純朴なのだが、カサにかかると急に集団心理でとても恐ろしいことをみんな平気でやらかす人種だよ。だからそうなる前に、有象くんかどなたか、きちんとした人物の元に投降して身の安全を計りなさいってことさ」
ああ、そういうことか! あまり言いたくないが第二次世界大戦(主として日中戦争)で日本陸軍、特に関東軍が中華大陸ににおいてどれくらい卑劣な行いをしたか、そのしっぺ返しの如く、ソビエト連邦軍の主戦力・ロシア軍兵に日本人がなにをされたかくらいは読者も勉強しておいた方がいいであろう。作者は知っているが言いたくないから言わないし、ネット上や印刷物も見たくないから自分も調べないし、書かないの!
一方、本人は自覚していなかろうが諸葛純沙の軍団は全員が当然ながら、純白スリム、でなにか光る素材でできた、普段素風家の純沙に似合わぬ美しい甲冑を揃えている。とはいえ、純沙は原材料に地球で最強の硬度である人工ダイアモンドをふんだんに用い、強力プラスチックで軽量化と実利のみ考えていたようだ。どの性能は、重量や関節の可動域を考慮して身軽で最高の防御力を持っているという。見た目だけならば、フェンシングの選手たちが少し重装備している感がある。
いずれにしても、全員が純沙のクローンなのだから、美人さんが30万人、どこかの新興宗教の『合同結婚式』を『新横浜国際球技場(日産スタジアム)』で開いているように錯覚してしまうがみな諸葛純沙である。
そこに、この世界で最初に諸葛純沙の味方を表明し天界より降臨した・聖徳太子が弟の殖栗皇子と嫡男・山城大兄王、さらには大臣・蘇我馬子、大連・物部守屋の二巨魁に、持国天・増長天・広目天・多聞天の四天王が東西南北を守護するという鉄壁なDF陣で固めた為に多聞天=毘沙門天なので、毘沙門天信仰の徒であり、その証のために「一生チェリーボーイします」と大泉洋的な宣言を乱国時代にしている・
ここで聖徳太子が諸葛純沙側に付いた事で天上天下は騒然となった。普段は会話どころか、サロンでも会うことのない弘法大師・空海と伝教大師・最澄が緊急リモート会議を行なったという噂が流れる中、ギリシゃ神話の神々、大神・ゼウス、太陽神・アポロン、海神・ポセイドンらギリシャ神話の男どもが純沙側につく。彼らギリシャ神話男神の度を越した女性好きは有名すぎるので、彼らの魂胆をいちいち説明する必要はないよね?
有象の改装された邸宅は『黒雲城』と名付けられ『一の城』に大将・有象無蔵と五大明王の主将・不動明王、東将・降三世明王、南将・軍荼利明王、西将・大威徳明王、北将・金剛夜叉明王という密教界最強明王軍団が純沙軍を冥土に送るべくそれぞれの真言を唱えている。
『二の城』にはぺこり十二神将が各国国司(親王任国を除く守、任国は介を部将とした介・尉・目まで)と共に守る。
『三の城』は薬師如来十二神将が各国守護職と入った。国司と守護職は官職名が重複するが「公家官職」と「武家官職」なので別物である。
そして、ある意味大注目を浴びていた薬師如来十二神将の最後の一人は……亥ノ神将であり、みなが変なスプラッターシーンに出くわさずにすんだ。
さあいざ! 合戦するぞおー! と皆が声を挙げた時、
「諸葛方より使者!」
との声。
「どなたかな?」
有象が問えば、
「はあ……ぺこりさまと諸葛純沙さま投降です! 諸葛さまはこの通り」
なんと純沙、古のテレビドラマ『最遊記』で三蔵法師を演じた、故・夏目雅子さんのようにつるぴかに得度していた。あまりの神々しさに有象は射精してしまった。美に勝るものなし。
有象は元の教養学科国文学教授に戻った。この学問が天職なのだろう。諸葛純沙は天熊寺に入山し、理事長職と軍師の座を辞めた。学園の束ねは町田先生が、軍師は羽鳥真実参謀本部総長が見る。
「やっと穏やか日が来る」
有象は傍らの佐竹希を抱きながら呟いた。しかし、そう簡単に彼が輪廻転生のミステリー・サークルから逃れることは不可能であろう。
でも、ここは一旦「キーボード、ウッチ方止め!」である。
(了)
了。
はぐれ教授 無教養学科 よろしくま・ぺこり @ak1969
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