当たる距離
「お邪魔しま〜す」
「ただいま〜」
娘が友達の悠真くんを連れて帰ってきた。
今日はテレビゲームで一緒に遊ぶらしい。
「いらっしゃい」
「どうも」
私相手ではまだ少し硬いけれど、娘相手には結構ラフに接している。
随分仲がいいみたいで、私は嬉しい。
「すげ〜こたつだ」
「ウチは毎年出してるの」
「珍しいな」
「そうなの?」
時代はもう、床暖房やエアコンなのよ……!
二人の会話を聞きながらそう思った。
実際、こたつを持っている家は減っているのだ。
「あったけ〜」
「みんな言う」
娘がふふふと笑う。
こたつって体も心も緩むよね。
「あっ! ごめん……」
「う、ううん。大丈夫」
ちょっとぎこちない空気。
あらあら、足でも当たったかしら。
娘の様子や、遊んでいる様子を見る限り、お互いに友達以上の感情があるみたい。
二人ともが気付いているかはわからないけど。
こたつを出してよかったわ。
足が当たる距離。
それを気にするお年頃って、とっても甘酸っぱいわよね。
いつか過ごした旦那との青春を少し思い出しながら、私は二人を見守ることにした。
大体、見開き1ページくらいの小説集 朏 天音 @tukitune
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